円安トレンドに潜む2つの円高リスク~米税制改革と外交政策

9月には1ドル=110円を割り込んでいたドル円ですが、10月以降は円安が進み、現在は113円台となっています。流れは円安方向にあるように見えますが、米税制改革や米外交政策には円高リスクが潜んでいる可能性がありそうです。

減税による景気押し上げで米貿易赤字拡大も

米税制改革が大詰めを迎えています。減税法案が成立すると、米景気の加速やインフレへの懸念から米金利が上昇し、円安ドル高が進むと考えられており、最近の円安は税制改革への期待に後押しされているといえるでしょう。

ただし、米失業率は4.1%と17年ぶりの低水準となっており、労働力を拡大する余地が乏しくなっています。また、雇用の拡大は低賃金のサービス業に偏ってもいます。これらは、米国内では生産を増やす余裕が乏しいことを示唆しており、減税による米景気拡大の恩恵を最も受けるのは輸入になるのかもしれません。したがって、貿易赤字が拡大する恐れがあるわけです。

2017年の米国経済は堅調な拡大が続いており、既に貿易赤字は拡大基調にあります。一方で、トランプ大統領は中国や日本、ドイツなどに対する貿易赤字を問題視しており、その背景として為替レートが割安だと主張しています。

税制改革が成立した結果、貿易赤字が増え、ドルが高くなった場合、トランプ政権が為替レートを問題視し、圧力をかけてこないとも限りません。この辺りを注意しながら経済指標やマーケットの動きとともに、米通貨政策にも注意を払う必要がありそうです。

中東情勢、イランの勢力拡大で緊張が高まる

トランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都と認定したことが波紋を広げており、軍事衝突に発展する恐れが警戒されています。

中東情勢はそもそもが不安定ですが、最近はイランの勢力が強まっていることが緊張を高めているといえそうです。

内戦が続くシリアでは、イランやロシア、レバノンのヒズボラが支援するアサド政権が維持され、米国やサウジアラビアが支持した反体制派は政権の打倒に失敗し「負け組」となることが確実な情勢です。

同じく内戦が続くイエメンでは、イランが支援しているとされるフーシ派の実効支配が続いており、サウジアラビアが支援する政権側は劣勢となっています。最近ではイエメンからサウジアラビアに向けてもミサイルが発射されており、4日にはフーシ派がサレハ前イエメン大統領を殺害しています。混乱が激しくなるようですと、サウジアラビアの手に負えず、撤退を余儀なくされる可能性もありそうです。

レバノンではイスラエルの“宿敵”とも言えるヒズボラが勢力を拡大しており、イスラエルの神経を逆なでしています。

このように、中東地域では米国と関係の深いイスラエルとサウジアラビアがイランの脅威にさらされており、米国が助け舟を出す条件が整いつつあるようです。

米国務長官辞任でタカ派抜擢との観測も

こうした中、8日には中東和平を担当していたパウエル米大統領副補佐官(国際安全保障問題担当)の辞任が発表されました。パウエル副補佐官は穏健派として知られており、同じく対話を重視するティラーソン国務長官の辞任観測も後を絶ちません。

国務長官の後任にはポンぺオCIA長官、CIA長官後任にはコットン上院議員を充てる人事がささやかれています。両氏はともにイランとの核合意に反対しており、トランプ氏の意見と合致していることから、意中の人とみられています。また、両氏ともに軍出身で、イランの政権転覆を米政府の目標として明確にすべきと主張していますので、実際に就任した場合には軍事的な緊張感が高まる恐れもあります。

ポンぺオ氏は北朝鮮の政権転覆にも前向きな姿勢を示しており、地政学的リスクは中東地域に留まりません。また、在韓米軍の家族が韓国から退避しているとの報道も警戒感を強めているようです。これまでは、トランプ大統領が北朝鮮に対する軍事オプションをちらつかせても、在韓米軍の家族が留まっていることから、現実味のない話と受け止められていました。

いずれにしても、地政学的なリスクの高まりは安全な逃避先としての円の魅力を高めると考えられていますので、中東情勢や北朝鮮問題に対するトランプ大統領の対応は要注意となりそうです。