米雇用統計の数字は労働市場がほぼ完全雇用にあることを示唆していますが、賃金の伸び率が低下していることが「謎」とされており、11月分もこの謎解きが続く見通しです。賃金の低い伸びが確認されるようですと、イールドカーブがフラット化し、雇用者数や失業率の数字にかかわらず、為替市場では円高に振れる恐れがありそうです。
雇用者数の予想は19.5万人増、リスクは下向き
11月の米雇用統計の事前予想は雇用者数が19.5万人増、失業率が4.1%、賃金の伸びが前月比0.3%増加となっています。
通常は雇用者数と失業率が注目されますが、現在の関心は圧倒的に賃金に移っています。一般に、失業率と賃金の伸びは逆相関の関係にあると考えられていますが、失業率が1月の4.8%から10月は4.1%にまで低下している中で、賃金の伸びも2月の前年同月比2.8%上昇から10月は2.4%上昇へ鈍化しており、順相関となっているからです。
賃金の低い伸びが物価の伸びを抑制していると考えられており、インフレリスクへの警戒が薄れる中、米連邦準備制度理事会(FRB)は断続的に利上げを実施しています。財・サービスの価格は伸びていませんが、S&P500の年初来の騰落率は12月7日現在で18%上昇と高い伸びを示しており、資産価格の大幅な上昇が利上げを正当化しているようです。
ただ、11月の人員削減計画が3万5038人と前年同月比30%増加したことは気がかりといえるでしょう。1-11月の累計では38万6347人と前年同期を22%下回り、1997年以来20年ぶりの低水準となっていますので、年初からの動きは失業率の低下と歩調が合っています。ところが、11月に大きく増加していることから、変調の有無を確認する必要がありそうです。
また、11月のISM指数は製造業、非製造業ともに低下し、ハリケーン特需がはく落したことを匂わせています。所得の伸びが低いと消費が盛り上がらず、景気が停滞する恐れがありますので、景気の先行きには警戒が必要となるのかもしれません。
米GDP成長率は7-9月期まで2四半期連続で3.0%超えとなり、やや予想外ともいえる高い成長を達成しています。引き続き高い伸びを維持できるのかどうか、11月の雇用統計はその試金石となりそうです。
賃金の伸び鈍化ならイールドカーブは一段とフラット化も
賃金の指標となる非農業部門の単位労働コストを見ると、7-9月期は前期比0.2%減となっており、雇用統計での賃金の低調な伸びを裏付けています。賃金の伸びがさえないことが、物価の弱さつながっていると考えられています。
こうした中、12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では追加利上げが確実されていますが、雇用統計で賃金の低い伸びが確認されるようだと、イールドカーブが一段とフラット化し、円高・ドル安を招く恐れもありそうです。
米10年債と2年債の利回り格差は7日現在で55bpsと2007年10月以来、10年ぶりの低水準となっています。利回り格差は過去4年ほど低下傾向にありますが、マイナスとなると景気後退が近づいたサインと考えられています。
