FRBの次期議長レース、イエレン議長再任の声が急上昇

トランプ大統領とコーンNEC委員長との確執が伝えられたことから、FRB議長レースでイエレン議長の再任を押す声が高まっています。本命不在となった議長レースの現況と展望を整理してみました。

38%がイエレン議長の再任を予想、フェド・サーベイ

CNBCが19日公表したフェド・サーベイでは、38%がイエレン議長の再任を予想する結果となりました。前回7月の調査ではわずか10%でしたので、再任の可能性が急浮上していることが分かります。

また、イエレン議長を再任すべきとの声は60%に達しています。大方の市場関係者はイエレン議長を再任すべきと考えており、その可能性は十分あるとみている模様です。ただ、急上昇しているとはいえ再任の可能性はまだ低く、議長レールの行方は混沌としているとも言えそうです。

コーン氏脱落、トランプ大統領との確執で

ところで、本命視されていたコーンNEC委員長は13%と7月の50%から急低下しています。背景には、人種差別を巡る発言でトランプ大統領とコーン氏の間に確執が生じているとの見方があります。コーン氏には辞任観測もくすぶっていますので、“大統領の次ぐ権力者”とも呼ばれるFRB議長を巡っての指名争いからは事実上脱落した模様です。

ウォルシュ氏がトップに浮上、再任見送りなら

イエレン議長の再任見送られた場合の予想では、ウォルシュ元FRB理事が34%でトップ、スタンフォード大学のテイラー教授が20%で続いています。7月調査ではウォルシュ氏が24%、テイラー教授は9%でしたので、いずれの候補も支持率が上昇しています。

とはいえ、トップのウォルシュ候補でも30%台ですので、再任が見送られた場合の対抗馬争いもまだ流動的な状況にあると言えるでしょう。

トランプ政権と共和党との奇妙な関係も影響か?

トランプ大統領は昨年の共和党の大統領指名レース中には「イエレン議長はクビだ!」との決めゼリフでアピールしていましたが、就任後はイエレン議長を「尊敬している」と述べるなど、態度を一変させています。

自らを“低金利主義者”としており、緩和的な金融政策を維持するイエレン議長を再任させたいのが本音なのかもしれません。

もしそうであるならば、議長の交代はFRBの緩和的な金融政策に批判的な共和党からの圧力ということになりそうです。

ただ、トランプ大統領はオバマケアの改廃案にてこずる共和党に対して強い不満を表明しており、トランプ政権と共和党議会の関係はぎくしゃくしており、一枚岩とはいえません。

ハリケーン被害救済法案では、共和党案を無視して民主党案を採用しており、最近のトランプ政権は民主党との協調路線を模索中です。

FRB議長の椅子を巡っては、民主党に歩み寄るのであればイエレン議長の再任、共和党からの声を重視するなら、議長は交代という見方もできそうです。

議長交代なら金融政策の大転換も

共和党がFRB議長の要件として最も重視しているはルール・ベースの金融政策への支持となるでしょう。

ルール・ベールの金融政策とは、おおざっぱに言えば、インフレ率やGDP成長率といった経済指標から機械的に最適な政策金利を決定する仕組みのことです。

一方、FRBは従来より政策金利を“裁量的”に決めています。「金利は経済データのみで決定されるべきものではない」との立場であり、不測の事態への対応も困難となることからルール・ベースの導入には強く反対しています。

共和党がルール・ベースを望む背景には、伝統的にドルの価値保存を重視する姿勢があります。共和党はドルの下落を米国の価値低下と捉える傾向にあります。また、大企業を支持基盤としていることもあり、ドル安で自国企業が買収されやすくなり、海外企業の買収のハードルが上がることも懸念されているようです。

共和党はFRBの緩和的な金融政策や量的緩和によるドル安に不満を募らせています。また、財政面ではタカ派であるため、財政再建に緩みをもたらすことも量的緩和に否定的な理由となります。

共和党はFRBの裁量で自由にドルを下落させたり、財政規律を緩めたりできないような仕組みを望んでいる模様です。共和党の意向を汲んで次期FRB総裁が選ばれるとすると、ルール・ベースの金融政策の導入検討が見込まれますので、金融スタンスは現在よりもタカ派的になるとみられています。

議長レースは振り出し、議会の動きに注目

FRBの議長レースは本命氏されていたコーン氏の事実上の脱落で振り出しに戻った模様です。イエレン議長の再任の可能性が急浮上していますが、共和党の巻き返しも十分可能であり、状況は流動的です。

トランプ大統領と共和党とのぎくしゃくとした関係が次期議長の行方を不透明にしています。トランプ大統領は財政改革を始めとした重要な法案を通すために民主党への歩み寄りを見せています。

こうした流れの延長線上にはイエレン議長の再任が見え隠れしていますが、共和党の手をこまねいているわけではないでしょう。米国では政府閉鎖やデフォルトのリスクもまだ残されています。トランプ政権と米議会との駆け引きが議長レースに影響するかもしれませんので、今後の政局の動きにも注目です。