【9月FOMC結果】低インフレは“謎”、政策の軸足は景気へ

米連邦公開市場委員会(FOMC)でバランスシート(BS)の縮小開始が決定されました。決定は予想通りでしたが、イエレン議長からはインフレの鈍化は“謎”との発言が飛び出しており、金融政策の軸足はインフレから景気に移ることになるのかもしれません。

BS縮小、引き締め効果は過大評価か?

BSの縮小は10月から毎月100億ドルで開始され、3カ月ごとに100億ドルずつ、来年10月に500億ドルに達するまで引き上げられる予定です。

BS拡大の影響については、バーナンキFRB前議長が2011年3月の議会証言で「1500億ドルから2500億ドルの資産買い入れは0.25%の利下げに相当する」と試算しています。

来年12月までの累計は4500億ドルですので、前議長の試算を“逆”に当てはめると2回から3回分の利上げに相当することになります。さらに、2019年は通年で6000億ドル縮小する予定ですので、3回から4回分の利上げ効果が見込まれ、これまでに比べるとかなり早いペースで金融が引き締まることになりそうです。

ただし、資産の購入と残高の縮小では効果が同じとは限りません。ニューヨーク連銀が今年4月に公表した試算によると、BS縮小による長期金利の押し上げ効果は年間で0.2%以下と推計されていますので、こちらの計算ではBS縮小による金融引き締め効果はかなり限定的といえそうです。

利上げ観測は強まるもドット・チャートは下方修正

FOMCの結果を受けて、米金利が上昇しています。FOMCメンバーが適切と考える金利目標を示す“ドット・チャート”で16名中12名が年内の利上げを支持したことで、追加利上げ観測が強まったからです。

しかし、ドット・チャートをよく見ると、利上げ見通しは後退しています。前回6月のFOMCでは、年内は金利据え置きとの予想が4名、1回の利上げが8名、2回の利上げが4名でした。今回は据え置きが4名、1回が11名、2回が1名となっています。従来と比べ、2回としていた委員が減っているだけです。

具体的な数字で確認すると、年末の金利見通しの加重平均値は9月が1.328%と6月の1.375%から低下、同様に2018年末の金利見通しが6月の2.227%から9月は2.039%へと低下しています。さらに、最終的に何%まで引き上げるのかを示唆する長期見通しも6月の3.0%から9月は2.8%に低下しています。

長期見通しは2015年6月の3.75%から断続的な引き下げに歯止めがかからない状況となっています。サンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁は22日、「長期見通しは2.5%まで低下するのではないか」との見解を示していますので、まだ下げ余地がありそうです。

低インフレは“ミステリー”、景気拡大なら懸念ぜず?

FOMC後の記者会見でイエレン議長は「インフレの鈍化はミステリー(謎)」と発言しています。

FOMCメンバーによる9月の景気見通しでは、インフレ見通しが低下した一方で、GDP成長率が上方修正されており、成長が加速しているのに物価の伸びが鈍化するのは辻褄が合いません。FRBはその理由を説明することをあきらめて、“謎”としたわけです。

その一方で、「景気の拡大が続いていることから、緩やかな利上げは正当化される」としていますので、利上げ継続の判断は、よくわからない物価はひとまず脇に置き、景気拡大に軸足をシフトさせたことを匂わせています。

マーケットは物価が低すぎることから、年内の追加利上げを慎重に見ていましたが、低インフレは“謎”と言われてしまっては、もはや利上げ見送りの理由とはならないのかもしれません。