米GDPは2年半ぶりの高い伸び、”使いすぎ”に注意か?

米GDP成長率が2年半ぶりの高水準となっています。減税法案も成立し、この世の春を迎えているようにも見えますが、所得は意外と伸びていません。貯蓄率の低下や債務の拡大が確認されており、使いすぎには注意したほうがよさそうです。

7-9月期の米GDPは+3.2%、2年半ぶりの高成長も額面通りには疑問

7-9月期の米実質国内総生産(GDP)は前期比年率+3.2%と4-6月期の+3.1%に続き、2四半期連続で3%超の高成長を達成しました。2015年1-3月期以来、2年半ぶりの高水準となっています。

ただし、この数字は割り引いてみる必要があるかもしれません。GDPは支出面から推計されていますが、所得面から経済活動を推計している国内総所得(GDI)の7-9月期の伸びは+2.0%にとどまっているからです。

経済成長を見る上でより良い指標と考えられているGDPとGDIの平均値は2.6%と前期の2.7%から小幅に低下しています。水準自体は高いのですが、GDIはGDPを2四半期連続で下回っており、GDPの数字ほどには景気に力強さはないとみたほうがよさそうです。

減税の効果には懐疑的な見方も

12月22日に減税法案が成立し、法人税がこれまでの35%から21%へと引き下げられました。減税により2018年の成長率は2017年から加速する見通しですが、懐疑的な見方も少なくありません。米国は最大雇用の状態にあり、財政拡大による景気刺激が景気の過熱につながる危険性があるからです。

ムーディズのアナリスト、アン・ヴァン・プラグ氏は「減税が経済成長に及ぼす影響は控えめなものなる」と予想。「減税で設備投資が増えるともみていない」と述べています。

今回の減税は約30年ぶりの大型減税ですが、1986年の減税では設備投資は増えていません。この年、法人税率は46%から34%へと引き下げられていますが、設備投資の対GDP比率を見ると、1984年の20%から1991年の15%まで緩やかに低下しています。減税により設備投資が増えた形跡はうかがえませんので、必ずしも設備投資が増えるというわけではなさそうです。

また、11月の失業率は4.1%と17年ぶりの低水準にあることから、雇用の拡大余地がほとんど残されていないことも成長の加速に懐疑的な理由に挙げられています。

所得の伸びが消費に追いつかず貯蓄率が低下、借金も拡大

個人消費の拡大と所得の伸びのアンバランスも警戒されています。11月の米個人所得は前月比0.3%増と前月の0.4%増から伸びが鈍化し、実質可処分所得の伸びは0.1%にとどまりました。にもかかわらず、11月の個人消費支出は前月比0.6%増と前月の0.2%から加速しています。この結果、貯蓄率は2.9%と前月の3.2%から低下し、2007年10月以来、10年ぶりの低水準となっています。

また、10月の消費者信用残高は前月比年率換算で6.5%増とこちらも所得の伸びを大きく上回るスピードでカ拡大中となっています。その一方で、自動車ローンやクレジットカード支払い遅延率が上昇傾向にあり、学資ローンの遅延率も高水準で高止まりしたままとなっています。計画的な返済に狂いが生じている恐れがあり、金融機関が与信の拡大に慎重になり始めてもおかしくありません。

税制改革では企業や富裕層には恩恵が厚く、低・中間所得層には薄いとされています。所得の伸びを上回る消費の伸びは貯蓄の取り崩しや借金の拡大に支えられており、持続性には疑問が残るといえそうです。