減税法案が成立したこともあり、米財政赤字への懸念が急速に広まっています。2019年度の財政赤字の対GDP比率は7年ぶり高水準となる見通しで、米国債の格下げも意識され始めています。また、楽観的な成長見通しや金利見通しに加え、FRBによるBS縮小も需給悪化要因として警戒されており、米金利上昇による株価圧迫への懸念も強まっている模様です。
2019年度の米財政赤字は7年ぶりの高水準
2019年度(2018年10月から2019年9月)の予算教書によると、2019年度の米財政赤字は9840億ドルと7年ぶりの水準に悪化する見通しです。
国防費を中心に歳出が前年比5%増加する一方で、減税により歳入の伸びは2%にとどまることで財政赤字が大幅に膨らむことが見込まれています。対GDP比率では4.7%と2012年度の6.8%以来の高水準となり、景気後退などの影響のない平時であるにもかかわらず、深刻な財政悪化への警戒が強まっています。
また、米政府は減税による税収の落ち込みを高成長による税収増でカバーするとしており、2019年のGDP成長率を3.2%と高めに見積もっています。また、2024年まで3.0%以上の高成長が続くと見込んでいます。
過去5年の米GDP成長率は2.2%であり、潜在成長率は1.8%と推計されていますので、成長見通しに甘さが残ることは否めないところです。
また、成長率に加え、金利見通しも楽観的となっています。予算教書では、米長期金利は2018年の平均が2.6%、2019年を3.1%と想定していますが、米10年債利回りは既に2.9%前後まで上昇しています。
年内に3回から4回の利上げが見込まれる中、市場では長期金利は年末までには3.5%を上回るとの見方が優勢となっています。想定されている以上の金利水準となれば、財政負担が増える恐れがあります。
こうした状況を踏まえると、2019年度の財政赤字の対GDP比率は5.0%以上となる公算も小さくはなく、財政赤字が雪だるま式に膨らむリスクが警戒されます。
ムーディズは格下げリスクを示唆
昨年末に成立した減税法案では減税の財源が確保されていないことから、米財政赤字は急速に悪化していくことが予想されており、米格付け会社のムーディーズは「深刻な財政赤字が格下げ方向の圧力に直面する」と警鐘を鳴らしています。
また、2018年度からの2年間で歳出上限が3000億ドル引き上げられたことで、米国債は大増発時代に突入したとの見方も浮上しています。
こういした中、FRBが保有する米国債を減らしており、年間で2000億ドル以上の減額が予定されています。国債増発とBS(バランスシート)縮小で国債市場の需給が急速に悪化することが懸念されています。
マーケットの予想では2018年度に市場で調達が必要な財政資金は9550億ドルと前年度比84%増と急拡大し、2019年度は1兆830億ドルとさらに膨らむ見通しです。国債の追加発行額は2018年度が3700億ドル、2019年度が8800億ドルとなる見込みです。
さらに、成長の下振れによる歳入減や金利上昇による調達コストの上昇などから、一段と需給が悪化する恐れもあります。
財政悪化が株価を圧迫も
財政赤字の拡大による長期金利の上昇は、2つの意味で株価を圧迫することが見込まれます。
まず、金利の上昇で株価のバリュエーションが低下します。債券の利回りが上昇することで、株式から得られる配当やキャピタルゲインの魅力が相対的に低下するからです。
また、景気への悪影響が企業業績を圧迫することも警戒されます。財政赤字が拡大することで、本来は民間企業へ投資されるばずだった資金が政府により吸い上げられてしまう恐れがあるからです。同様に、米国債の発行が増加し、金利が上昇することで民間の資金調達コストが上昇することも懸念されます。
このように、財政悪化への懸念が金利の上昇をもたらすことで、好調だった株式市場に変調をきたす恐れがあり、注意が必要となりそうです。
