8月の米雇用統計では雇用者、平均時給ともに事前予想を上回りました。失業率は横ばい、労働参加率が低下した点は気がかりですが、総じて労働市場が力強い伸びを維持していることが確認されました。堅調な雇用統計を受けて、次回FOMCでの利上げが確実な情勢となり、長期金利が上昇し、株価は下落しています。景気の底堅さが期待できる一方で、FRBによる利上げと米中貿易戦争の激化が投資家心理を冷ましているようです。
8月は+20.1万人、趨勢的な伸び鈍化も堅調さは維持
8月の米雇用統計では雇用者数の伸びが前月比+20.1万人と事前予想の+19.0万人を上回りました。
ただ、7月分は+14.7万人と速報値の+15.7万人から下方修正となり、過去2カ月分の合計では5万人の下方修正となっています。この結果、基調的な動きの目安とされる3カ月間の平均値は+18.5万人と前月の+22.4万人から失速しています。
とはいえ、20万人近い増加は労働市場が依然として堅調であることを示していますので、数字的にはまったく問題がないといえるでしょう。
失業率は3.9%で横ばい、労働参加率の低下に懸念
8月の失業率は3.9%と前月から横ばいとなりました。事前予想は3.8%への改善が期待されていましたが、この予想には届きませんでした。
事業所調査での雇用者数の伸びとは裏腹に、家計調査での就業者数は-42.3万人と大きく減少しており、真逆の数字となっています。ただし、労働力人口も-46.9万人となったことから失業率は上昇しませんでした。
仕事を探していない人は失業者とはカウントされませんので、今回の就業者数の大幅な減少はその分が労働市場から退出したことを意味しており、非労働力人口が+69.2万人となっています。
その影響で、労働参加率は62.7%と前月の62.9%から低下しています。労働参加率の低下は労働市場の弱さを示唆していますので、この点は気がかりといえるでしょう。
平均時給は+2.9%、予想外の上昇でポジティブサプライズに
8月の雇用統計では平均時給が前年比+2.9%と事前予想の+2.7%を上回ったことが大きなサプライズとなりました。
7月の米消費物価指数(CPI)は前年比+2.9%と7月まで2カ月連続で物価の伸びが賃金の伸びを上回っていました。
賃金の低い伸びによる個人消費の鈍化を警戒する声も少なくありませんでしたが、8月は2009年以来となる高い伸びとなったことでこうした懸念が薄らいだ模様です。
年内にあと2回の利上げを後押し、懸念は米中貿易戦争へ
低迷していた賃金の伸びに加速が見られたことで、FRBが年内にあと2回、9月と12月に利上げを実施する見通しが強まっています。
ただ、雇用統計が発表された7日にはトランプ大統領が中国製品に対して新たに2670億ドルの追加関税の用意があると発言。FRBの利上げ継続と米中貿易戦争の激化のダブルパンチで株価が下落しています。
8月の雇用統計を含め、米経済指標は堅調な数字が並んでいますが、利上げと関税合戦への警戒感から株式市場は伸び悩んでいます。
株式市場の冴えない動きが実体経済に与える影響には注意が必要となりそうです。
