8月の米雇用統計では、賃金の伸びは予想を上回ったものの、雇用者数の伸びが予想に届かず、総じてやや弱めの内容となった。結果を受けて、9月FOMCでの利下げは確実な情勢となった。
雇用者数は+13.0万人、増勢鈍化を継続 景気減速を示唆
8月の米雇用統計では非農業部門の雇用者数が前月比+13.0万人と事前予想の+15.0万人に届かなかった。過去2カ月分は合計で2万人下方改定され、基調的な動きの目安とされる3カ月間の平均値は+15.6万人となった。2018年は月平均で+22.3万人だった。
人口の増加を吸収するのに必要な雇用の伸びは10万人程度と考えられていることから、景気後退を回避するには十分な伸びを維持しているものの、景気の拡大スピードは明らかに鈍化していることを示した。
製造業の不振を改めて確認、小売業は7カ月連続減
8月の製造業での雇用者数はわずか+0.3万人にとどまった。年初からの累計は+2.7万人で、前年の同じ期間の+15.4万人から大きく鈍化した。また、小売業は-1.1万人と、7カ月連続で減少した。
米供給管理協会(ISM)が3日発表した8月の製造業総合景況指数は、市場の予想外に低下し、3年ぶりに活動縮小を示していたが、製造業の不振が雇用統計でも改めて確認された。
国勢調査の臨時雇用を除くと減速はさらに浮き彫りに
8月は政府部門が+3.4万人となり、このうち+2.5万人は2020年の国勢調査に向けた臨時雇用だった。
民間に限ると、8月の雇用者数は+9.6万人と、前年同月の+24.6万人の4割以下となる。6月は+16.1万人、7月は+13.1万人だったことから、臨時雇用を除くと増勢鈍化は一段と浮き彫りとなる。
失業率は3.7%で変わらず、人材不足で景気後退の足音も
8月の失業率は3.7%と前月の3.7%から変わらなかった。4月と5月は1969年12月以来、約49年ぶりの水準となる3.6%まで低下していたが、6月以降は3カ月連続で3.7%となった。
失業率は、昨年9月に3.7%まで低下して以降は一進一退の動きとなっており、おおむね横ばいの動きが続いている。
金融市場では、3月に米3カ月物短期債利回りが米10年債利回りを上回ったのに続き、8月には2年債と10年債でも利回りが逆転したで、いよいよ景気後退の足音が近づいてきたとの見方が強まった。
エコノミストの間では、長短金利の逆転とともに、失業率の逆転も景気後退のサインと考えられている。すなわち、失業率が前年同月を上回ると、景気後退が近いことを示唆している。この意味では、来月の失業率が3.8%以上に上昇すると逆転が起こるので、要注意となる。
8月の家計調査では就業者数が+59.0万人と急増し、非労働力人口も36.4万人減少したことなどから、労働参加率は63.2%と前月の63.0%から0.2%ポイント上昇した。
こうした数字は、これまで職探しを諦めていた労働者が労働市場に復帰し、仕事に就いた可能性を示唆しており、それ自体は喜ばしいことだ。
ただ、失業者はわずかに1.9万人しか減少しておらず、正社員を希望しながらもパートしか見つからない労働者などを含む広義の失業率は7.2%と前月の7.0%から上昇した。労働参加率は1年前と比べると0.5%ポイント上昇している。
労働市場で適当な人材が不足していることをうかがわせており、供給不足が雇用増加のボトルネックとなる恐れがある。見方を変えると、労働市場がピークアウトし、失業率が上昇に向かう可能性もあるということだ。
賃金の伸びは予想上回る、13カ月連続で3.0%以上に
8月の平均時給の伸びは前月比+0.4%、前年同月比+3.2%と、市場予想の+0.3%、+3.0%をそれぞれ上回った。ただ、7月の+3.3%からは減速した。平均労働時間は34.4時間と前月の34.3時間から増加した。
平均時給の伸びは13カ月連続で+3.0%以上を維持しており、雇用者数の伸びに陰りが見られる中で、明るい材料となった。
利下げ確率はほぼ変わらず、9月FOMCで0.25%利下げへ
総じて弱い雇用統計の結果の受けて、9月米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げが確実な情勢となった。
CMEグループによると、雇用統計発表後、9月FOMCでの0.25%ポイントの利下げ確率は92%と、前日の95%からわずかに低下した。0.5%ポイントの利下げ確率はゼロで、先週から変わっていない。
13日発表の8月米小売売上高で個人消費の最新の動きが確認される。
