4・5月FOMCでは、IOERが引き下げられた。声明文では、景気見通しを上方修正した一方で、伸び悩むインフレ率に警戒感をにじませた。
景気見通し堅調も低インフレを警戒 金利は据え置き
4月30日から5月1日にかけて開かれた米連邦公開市場委員会(FOMC)では、短期金利の指標となるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを2.25~2.50%に維持することを決定した。
声明文では、景気について「労働市場は力強く推移し、経済活動は堅調なペースで拡大した」と指摘。前回の「経済活動の拡大は昨年の第4四半期の堅調な速度から鈍化した」との見方を上方修正した。
ただ、1-3月期の米GDP成長率は前期比年率換算3.2%と高い伸びを示したが、輸入の減少と在庫の増加が貢献していたことを踏まえて、「家計支出と企業の設備投資の伸びは第1四半期に鈍化した」と指摘することも忘れなかった。
インフレを巡っては、前回の声明文での「主にエネルギー価格の下落が原因で全体のインフレ率は低下した」との文言がすっかりと抜け落ち、「将来のインフレを示す市場ベースの指標はここ数カ月で低くとどまっている」と指摘。目標となる2%からのかい離が続いていることに警戒感をにじませた。
米連邦準備制度理事会(FRB)が重視する個人消費支出(PCE)物価指数は、5カ月連続で上昇率が2%を下回っている。パウエル議長はFOMC後の記者会見で、「物価の停滞は一時的だろう」との見方を示したものの、インフレ率が目標を下回った状況での利上げ再開はハードルが高い。また、同議長は「金融政策を(利上げ・利下げの)どちらかに動かす強い証拠はない」とも指摘し、早期の利下げ観測にも釘を刺した。
今回のFOMCでは、目立った変更も大きなサプライズもなかったが、市場ではパウエル議長が利下げ観測を打ち消したことが材料視されて、米株株式市場は下落した。
FF金利上振れでIORE引き下げ 効果は不明
FRBは超過準備預金金利(IOER)を5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)引き下げて2.35%とした。FOMCではFF金利の誘導目標を据え置いたものの、事実上の目標上限と考えられているIOERの引き下げは、FRBがFF金利の誘導目標からの上振れ抑制に苦慮している姿を浮き彫りにした。
FF市場は民間金融機関が準備預金の過不足を調整する場であるが、量的緩和で超過準備の状態が恒常化したことで、金融機関はFF市場で資金を調達するインセンティブが事実上なくなっていた。
IOERはFF金利誘導目標の下限になると考えられていたが、FF市場には準備預金を必要としない金融機関も参加していることが影響して実際のFF金利はIOERを下回って推移し、結果的にIOERは誘導目標の上限となっていた。
しかし、米財政赤字の拡大に伴い、米短期証券(TB)が大量に発行された影響などから、FF金利がIOERを上回る状況が昨年から続いている。FRBのバランスシート縮小が影響したとの見方もある。現時点では、IOERの引き下げでFF金利の上振れが解消されるのかどうかはよく分かっていない。
FF金利がIOERを上回ること自体に大きな問題があるわけではないが、理由はどうあれ、出口政策を開始したことで、量的緩和時代には見られなかった現象が金融市場に影を落としおり、今後の推移が注目されている。
