IMFが中国に再びイエローカード、過剰債務拡大と為替操作を懸念

国際通貨基金(IMF)が再び中国の過剰債務に警鐘を鳴らしています。加えて、保護貿易や管理通貨への懸念も表明しています。その一方で、米国は中国に対して通商法301条に基づく調査を開始しており、米中の貿易戦争、通貨戦争へと発展する恐れがあります。米国が対中強硬路線に転じた場合には円高リスクを警戒する必要があるかもしれません。

持続不可能な債務膨張が予想外の高成長を演出

中国では過剰債務とシャドーバンキング問題が引き続き警戒されています。今回のIMFリポートでは「中国の信用膨張ペースは危険であり、混乱を伴う調整か著しい成長鈍化、あるいはその両方をもたらすリスクが増大している」と述べ、公的部門と民間部門の債務を大幅に膨らますことで達成された高い成長率は健全性に問題があると指摘しています。つまり、債務の膨張とそれに支援された高成長は持続不可能であり、高い成長率はその後の調整リスクをむしろ高めている可能性があるわけです。

その一方で、中国人民銀行(中央銀行)は7月のリポートでシャドーバンキングへの規制はまだ不十分として監督強化の姿勢を打ち出してます。シャドーバンキングへの規制強化は長期的には金融システムを安定させる一方で短期的には痛みを伴うリスクがあります。

また、上海証券報は8月18日、シャドーバンキング規制により一部地方銀行のバランスシートが大幅に縮小していると指摘しています。規模の小さい銀行ほどシャドーバンキングに積極的であったことから、取り締まりにはより大きな打撃を受けるとみられています。

6月までは好調だった中国経済も7月以降の経済指標には減速が目立ち始めています。債務の膨張に依存して高い成長を達成してきたものの、規制の強化で成長にブレーキがかかる兆しが見えています。

貿易障壁や通貨管理も懸念、米国は301条での調査を開始

IMFのリポートでは中国の貿易障壁や通貨管理もやり玉に挙げています。中国に対して関税の引き下げや市場開放を求めた上で、貿易障壁を削減することが主要貿易相手国との摩擦緩和に役立つと提言しています。また、為替に関しては過去1年で人民元の管理を強化したとしており、市場に為替レートの形成を委ねる方向に政策を戻すよう勧告しています。

IMFは2015年の報告書では「人民元は過小評価されていない」と述べ、中国が人民元安を誘導しているとの見方を否定していましたので、今回の報告者はこれまでの見方を180度転換したと言えそうです。

ところで、ムニューシン米財務長官は2月、IMFに対して加盟国の為替政策を公平に分析することを求め、合わせて貿易不均衡の問題にも取り組むよう促しています。今回の報告書はまさにトランプ政権の意向を忖度したことを匂わせています。

IMFレポートの公表にタイミングを合わせたかように、米通商代表部(USTR)は18日、中国が米国の知的財産を侵害している疑いがあるとして、関税の引き上げを視野に入れて通商法301条にもとづく調査を正式に開始しました。

9月の米中包括経済対話が物別れに終わって以降、米国の対中強硬路線が鮮明化していますので、10月の米為替報告書では中国を為替操作国に認定する可能性も否めません。

米国の対中強硬路線、日本に飛び火なら円高リスク

トランプ大統領は中国のみならず、日本やドイツに対しても為替操作を行ってきたと批判していますので、この問題は日本へも飛び火する恐れがあります。

IMFは今年7月に公表した日本に関する年次報告書で、2016年の円相場はファンダメンタルズと整合的な水準だったと述べています。昨年11月の米大統領選挙までの約5カ月間、ドル円はおおむね1ドル=100~105円のレンジで推移していましたので、この水準を整合的と判断しているのかもしれません。

というのも、IMFが推計している購買力平価を見ると2016年のドル円は102.6円、2017年は100.8円となっているからです。米国側の考える為替レートの適正水準が100円台前半にあるとすると、110円前後では円がまだ割安と判断される恐れがありそうです。