米国と北朝鮮との間での緊張の高まりを受けて世界の株式市場が動揺しています。ただ、北朝鮮の挑発的な態度の裏に米中関係の悪化も見え隠れしています。また、ロシアと北朝鮮の接近も気になるところです。北朝鮮をめぐる最近の国際政治の動きをまとめてみました。
米朝間での“口撃”がエスカレート
米国と北朝鮮との間で激しいやり取りが続いており、軍事的な衝突に発展にするのではないかと恐れられています。ヒートアップのきっかけとなったのは、5日の国連安全保障理事会で北朝鮮に対する新たな制裁決議が採択されたことでした。この決議に北朝鮮が反発、7日に「米国の挑発に断固たる報復で対処する」との政府声明を発表すると、すかさずトランプ大統領が「炎と怒り」に直面すると応酬し、軍事行動も辞さないとの強硬姿勢を示しました。
これに対し北朝鮮が9日にグアム周辺に向けてミサイル攻撃を検討中と応戦すると、10日にはトランプ大統領が「炎と怒り」は生ぬるい発言だったと再び挑発。翌11日には「軍事的な解決への準備は完了している」とツイートするなど、両者の“口撃”がエスカレートして現在に至っています。
米中関係の悪化も一因か?
一見すると、米朝間での軍事的な緊張が高まっているだけのように見えますが、その背後には中国との貿易問題が隠れており、問題を複雑にしています。
トランプ大統領は対中貿易赤字が膨らんでいることを問題視し、大統領就任初日に中国を為替操作国に認定すると公約していましたが、実現しませんでした。一方、4月の米中首脳会談では対中貿易赤字縮小に向けた「100日計画」を策定することで合意し、「中国が北朝鮮問題を解決すれば、貿易協議は中国にとってよいものとなる」として北朝鮮問題と貿易問題の取引を提案しています。
要するに、米国が中国に対し「貿易赤字は大目に見るから北朝鮮を何とかして欲しい」と要請し、中国側が受け入れた格好となりました。
しかし、実際のところ北朝鮮での核・ミサイル開発は停止されるどころかむしろ加速し、また対中貿易赤字も同様に縮小どころか拡大しています。その一方で、「100日計画」が期限切れとなる中で迎えた7月の米中包括経済対話は、意見がまとまらないまま物別れに終わってしまいました。
米国は北朝鮮問題の解決への期待から中国への制裁を先送りしてきましたが、経済対話が決裂したことで制裁への機運が高まっています。トランプ大統領は14日、中国のを対象に通商法301条に基づく不公正貿易の調査を指示しています。不公正貿易があると判断されれば、関税の引き上げなど制裁の実施が可能となります。
トランプ大統領が「炎と怒り」発言をした10日、中国についても「貿易で巨額の赤字を出している。しかし中国が北朝鮮問題で支援してくれれば、貿易問題も違ってくる」と述べており、北朝鮮問題と中国との貿易摩擦がリンクしていることを匂わせています。
中国とロシアの蜜月で米ロ関係も険悪に
米国では8月2日にロシア制裁強化法が成立しており、米ロ関係も悪化しています。
北朝鮮は米独立記念日に当たる7月4日に大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射し、米国を挑発していますが、この日はモスクワで中ロ首脳会談が開かれており、米韓合同演習の中止を求めることで合意しています。
北朝鮮のICBMはウクライナ製とみられており、北朝鮮の挑発的行為の後ろには中国とロシアの影が見え隠れしているわけです。
中国は貿易問題と北朝鮮問題は切り離して考えるべきだと主張し、北朝鮮の核開発を批判する一方で、米韓合同での軍事演習も受け入れられないとしています。
中国との貿易摩擦を北朝鮮の核開発阻止に利用したい米国と、北朝鮮問題を韓国からの米軍撤退に利用したい中国との間での綱引きがうかがえます。
そして、経済制裁が強化されたロシアとこれから経済制裁を受けそうな中国は、韓国からの米軍撤退で思惑が一致しています。そして、そのロシアのラブロフ外相は11日、北朝鮮の核開発をめぐり米朝が軍事衝突する危険性が「非常に高い」とわざわざ警告しています。
北朝鮮問題は中国・ロシアと米国と対立構造が少なからぬ影響を与えている模様です。
米国と中ロの対立激化も?
米国と北朝鮮での緊張の高まりの背後には、北朝鮮の核開発を中国との貿易摩擦を利用して解決したい米国と、それを受け入れない中国との確執が見え隠れしています。
また、米朝間での軍事的リスクもさることながら、米国で対中経済制裁への機運が高まっていることから、米中間での貿易戦争へと発展する恐れもありそうです。
さらに、北朝鮮をめぐっては、ロシアと中国での思惑が一致しており、米国との対立が激化する恐れもありそうです。
