米債務上限の引き上げ期限が9月末に迫る中、トランプ大統領と米議会との不協和音が生じており、2011年の“米国債ショック”の再来が警戒されています。
予算不成立なら政府閉鎖、債務上限に達するとデフォルト
米国では予算案と債務上限引き上げという2つの問題を抱えていますが、それぞれのリスクは異なります。
米議会は9月30日にまでに予算案を成立させないと政府閉鎖になります。米会計年度は10月1日から9月30日であり、2017年度は9月30日で終わります。10月1日からは2018年度が始まりますので、この日までに予算を成立させる必要があり、予算が成立しないと、政府は公務員への給与を支払えなくなることから政府機関が閉鎖されてしまいます。
一方、米国では国の借金の限度額が決められており、米財務省によると9月29日にこの限度額、すなわち債務上限に到達します。上限を引き上げないと、これ以上は借金ができなくなり、国債の利払いができなくなることから、米国債がデフォルトすることになります。
ただ、デフォルトとはいっても米国が破綻するわけではなく、潜在的な返済能力は保持しています。技術的・制度的な問題から支払いができないことから、一般のデフォルトとは区別してテクニカル・デフォルトとも呼ばれます。
共和党内に条件付きでの債務上限引き上げを求める声
共和党内の一部から債務上限の引き上げの条件として歳出削減を求める声が上がっていることから、本来は別々に審議されるべき予算と債務上限がセットで議論されています。
条件付きでの債務上限引き上げを要求しているのはフリーダム・コーカス(自由議員連合)という派閥のようなグループです。フリーダム・コーカスは保守強硬派として知られており、小さな政府を目指しています。減税と歳出削減には賛成ですが、債務上限の引き上げ反対しています。
フリーダム・コーカスはトランプ政権の目指すオバマケア改廃案を撤回に追い込んだ実績があり、共和党でありながら同政権の“天敵”とみられています。
また、2011年に債務上限の引き上げに反対して米国債をデフォルト寸前に追い込んだのはティーパーティ系の議員でした。フリーダム・コーカスはティーパーティに近い存在としても知られています。
カギ握る“壁”の建設予算、トランプ大統領は拒否権発動も
トランプ政権は無条件での債務上限引き上げを目指しており、この方針は民主党とも一致しています。したがって、フリーダム・コーカスの反対の声を押しのけるのであれば、共和党の残りと民主党で債務上限を無条件で引き上げることができます。
とはいえ、共和党と民主党は予算案では対立しています。米政府の予算案は共和党が重視する軍事関連の支出を拡大する一方で、民主党の重視する環境や福祉の予算を大幅にカットしていますので、民主党からの強い反発があります。
また、トランプ大統領の要請でメキシコとの国境に建設する壁の費用も予算案に計上されており、この予算計上に民主党は断固反対しています。
トランプ大統領は予算に壁の建設費が盛り込まれないのであれば拒否権を発動するとしています。さらに、8月22日には壁建設の予算確保のためなら政府閉鎖も辞さないとまで発言しており、対決姿勢を強めています。
こうなると、予算案での対立により超党派での債務上限引き上げが困難となり、予算も債務上限の引き上げも宙浮く恐れがあります。
米国債ショック”の再来を警戒、ドル円には円高リスク?
米国では政府閉鎖をこれまでも経験しており、直近では2013年10月に起きています。過去の経験からすると政府閉鎖の経済への影響は軽微である。たとえば2013年10-12月期のGDP成長率は前期比年率3.1%増と堅調、この間に株価も上昇しています。
一方、デフォルトの発生は過去に例がありませんが、デフォルトが寸前で回避された2011年8月は“米国債ショック”により世界同時株安となっています。2011年の債務上限問題では米国債が史上初めて最上位格から陥落しおり、米国債ショックは“格下げ”の影響を大きく受けています。
格付け会社のフィッチは8月23日、債務上限が10月までに引き上げられなかった場合には米格付けを引き下げる方向で見直すと発表しています。今回も最終的にはデフォルトを回避したとしても、デフォルトリスクの高まりから格下げされる恐れがあります。
2011年の米国債ショックでは、株式市場が急落した一方で、米国債はむしろ買われています。リスク回避で金が買われたほかドル円は円高に振れています。同じことが起きるとは限りませんが、米国債ショックの再来には備えが必要な風向きとなっています。
