ダボス会議に参加中の米財務長官の発言をきっかけに為替市場が混乱し、ドル円が急落しています。発言は日欧からの反発も招いており、通貨戦争や貿易戦争への発展が危惧されています。
「弱いドルは国益」との財務長官発言を大統領が打ち消す
ムニューシン米財務長官が24日、世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)で米国にとって「弱いドルは国益」と発言したことで為替市場に衝撃が走りました。
クリントン政権で財務長官を務めたルービン氏以降、本音はともかく、「強いドルは国益」とすることが米財務長官の一貫したスタンスでした。したがって、濃淡はあったものの、これまで保持してきたドル高政策の“転換”か、とマーケットが色めき立ったわけです。
ただし、ムニューシン発言を受け急速にドル売りが広まったこともあって、米政府高官からはドル安容認を否定する発言が相次ぎました。まず、サンダース報道官が「ドル相場は非常に安定している」としてドル安誘導との思惑を否定したほか、ロス商務長官も「強いドル政策の転換を唱えたわけでは全くない」とムニューシン氏を擁護しています。
さらに、トランプ大統領自らが「ドルはどんどん強くなる。最終的にはドル高を見たい」とムニューシン氏の発言を事実上修正しています。ただし、同大統領はこれまで、ドル高が米企業の国際競争力を奪うとの考えから、ドル安を望む発言を繰り返していましたので、今回の発言は従来から180度の”転換”となります。
市場の反応を見ると、トランプ氏の発言で一旦はドル高に振れたものの、時間の経過とともに上げ幅を失い、最終的にはドル安方向に動いていますので、大統領の発言は聞き流されたようです。
日欧からは猛反発、保護貿易を危惧
ムニューシン長官の発言に対し、日欧からは反発の声が挙がっています。ECBのドラギ総裁は、最近のユーロ高は「ECBではないく他の誰かの発言」、すなわちムニューシン氏の口先介入のよるものだと批判しています。また、同総裁はムニューシン氏の発言は「IMF加盟国間の合意事項に反する」とも指摘。IMFの合意事項とは、通貨の価値を決めるのは政府ではなく”市場”という考え方を指しています。
同様に、IMFのラガルド専務理事もムニューシン氏に発言の意図を説明するよう促すとともに、ドル相場は「市場が決めることだ」とクギを刺しています。
また、麻生財務大臣もムニューチン氏の発言に対し「貿易や国際競争力のために為替レートを目標としないことは20カ国・地域(G20)などの合意。それに適切に対応すべきだ」とけん制しています。
トランプ政権は発足当時から“米国第一主義”を掲げており保護主義的な貿易政策のスタンスを取り続けています。ダボス会議では、トランプ大統領がTPPへの復帰の可能性をほのめかすなど、にわかには信じがたい発言もあり、本音なのかリップサービスなのかの見極めはまだこれからといえるでしょう。
いずれにしても、通貨戦争、貿易戦争へと発展する可能性も否めないことから、当面は為替や貿易を巡るトランプ政権からの発言に為替市場が振り回される恐れがありそうです。
