【米ロシア疑惑】フリン前補佐官との司法取引成立で風雲急を告げる

いわゆる米ロシア疑惑に関して、フリン前大統領補佐官(国家安全保障担当)が司法取引に応じ、米連邦捜査局(FBI)への虚偽報告を認めたことから事態が大きく進展しています。トランプ大統領の弾劾の可能性が高まったほか、北朝鮮情勢や中東問題にも動きがあるかもしれず、きな臭い状況となっています。

司法取引成立で焦点は司法妨害へとシフト

昨年の米大統領選挙でのロシアとトランプ陣営の共謀を捜査しているモラー特別検察官は、フリン前補佐官をFBIへの偽証罪で起訴。フリン被告は罪を認め、捜査に協力するのと引引き換えに減刑などを求める司法取引に応じたもようです。

偽証罪では通常、最大5年の禁固刑が求刑されますが、同被告への求刑は6カ月となっています。

フリン被告は、昨年12月にロシアと接触し、FBIに対してその内容を偽証していました。同被告は供述で、ロシアとの接触はトランプ政権移行チームからの指示だったと述べています。

トランプ政権はロシアとの接触はフリン被告の単独行動としていますので、見解が食い違っています。供述を裏付ける証拠があるのかどうか、今のところはまだ不明ではありますが、供述が正しいとすると、トランプ大統領を含むトランプ政権の中枢部が虚偽の報告をしていた可能性があり、偽証罪に問われることになりそうです。

また、トランプ大統領がフリン被告に対し、FBIに虚偽の報告をするよう働きかけた場合、トランプ大統領の行為は“司法妨害”とみなされる可能性が高いとされています。

“司法妨害”は大統領の弾劾手続き開始に値する“重大な犯罪”に当たるとみられており、はたしてフリン被告の偽証に大統領本人が関与していたのかどうかに関心が集まりそうです。

FBI長官解任劇での司法妨害観測も強まる

また、コミー前FBI長官解任にまつわる司法妨害の追及もさらに深まる見通しです。

1月26日にイエーツ司法長官代理がフリン氏とロシアとの接触をホワイトハウスに報告しており、トランプ大統領は少なくともこの時点までには中央情報局(CIA)がフリン氏とロシアとの会話を盗聴し、接触を把握しいたことを知ることになります。

翌27日、大統領はコミー長官をホワイトハウスに呼び出し、「忠誠を誓う」ことを求めるも拒否されています。コミー長官を巻き込んで隠ぺい工作を図ろうとして失敗したことを伺わせます。

2月13日、ペンス氏が辞任。翌14日、トランプ大統領は再びコミー長官と会い、フリン氏への捜査を打ち切るように要請しています。辞任の公式見解はペンス副大統領に対する虚偽報告ですが、ロシアとの接触も虚偽報告をさせていたのもトランプ政権の中枢部であるわけですから、捜査の継続が脅威であったことは容易に理解できそうです。

コミー長官は3月20日、下院でロシア疑惑を捜査中であることを証言。5月3日の上院での証言前には、トランプ政権から証言内容を事前に報告するよう要請されましたが、あっさりと拒否しています。証言内容を事前に報告することは前代未聞であり、かなり焦っていたことをうかがわせます。

5月9日、コミー長官は解任されることになります。権力を利用して圧力をかけた時点で司法妨害が成立する可能性があり、一連の動きに照らし合わせると、解任は職権乱用であったことを匂わせています。

北朝鮮や中東での有事を警戒、国務長官辞任の恐れも

フリン被告が12月にロシアと接触した際、指示を出したのはクシュナー大統領上級顧問であったことが複数のメディアから指摘されています。

フリン前補佐官は駐米ロシア大使に、国連安保理決議に反対するよう要請していますが、この決議案はイスラエルに対する入植活動の停止を求めるものでした。クシュナー氏はイスラエルと深い関係にあるとされています。

事実だとすると、まずはクシュナー氏が捜査の標的となり、続いてトランプ大統領へと移るのかもしれません。

いずれにしても、政権中枢部が疑惑の中心となりますので、ホワイトハウスが国民の関心をそらす誘惑に駆られる恐れがあります。

最も警戒されているのが北朝鮮問題です。米政府は在韓米軍家族に韓国から退避を既に伝えており、年内にはすべて帰国する見通しです。

これまでは、3万人ともいわれている在韓米軍家族がとどまっていたために、北朝鮮に対しての軍事オプションをちらつかせても説得力がありませんでした。

実際に軍事行動に出るのかどうかは不透明ですが、在韓米軍家族の帰国が軍事オプションに現実味を持たせることは間違いなさそうです。

また、イエメンでの政情不安もきがかりです。イエメンでは4日、反政府武装組織がサレハ前大統領を殺害しました。また、反政府武装組織はこの1カ月あまりで2回、サウジアラビアに向けてミサイルを発射しています。

内戦が続くイエメンでは、サウジとイランが代理戦争の状態にあります。最近ではイランとの関係が悪化しているイスラエルがアメリカの仲介でサウジと接近しており、対イランで共同歩調を取る可能性が強まっています。トランプ大統領はイランとの核合意の反故を繰り返しほのめかしており、イスラエルを強力に支持していることは周知の事実でしょう。

トランプ大統領は、北朝鮮やイランに対して強硬姿勢を取らないティラーソン国務長官に強い不満を持っており、関係の悪化が伝えられています。国務長官辞任の観測は後を絶たず、後任には強硬派で知られるポンぺオCIA長官の名前が挙がっています。

年内辞任と見方が残るティラーソン長官が実際に辞任し、ポンぺオ氏が後任となった場合、北朝鮮や中東での軍事行動もかなり現実的なオプションとなりそうで、今後の動きが注目されます。