ダウ平均が2万3000ドル、高値更新の意外な理由とその落とし穴とは?

10月17日の米株式市場ではダウ平均が初めて2万3000ドルに達しました。年初からの好調を維持している米株式市場ですが、意外にも投資家のセンチメントは弱気であり、これが高値更新の原動力との見方もあります。

投資家センチメント、“弱気”だと調整が遅れる

2017年のノーベル経済学賞はシカゴ大学のリチャード・セイラー教授が受賞しました。同教授は、世界的な株高に対して「謎だ」と述べ、活況が続いていることで投資家がリスクに無頓着になっているのではないかと懸念しています。

しかし、最高値の更新が続く米株式市場では、実際のところ投資家に慢心はうかがえず、むしろ“弱気”となっています。

全米個人投資家強化(AAII)が週次で公表している投資家センチメント調査によると、今後6カ月の株式市場について“強気”と答えた投資家の割合は、年初から10月12日までの平均値が33.5%と過去平均の38.3%を下回っています。同様に、“弱気”は32.0%と過去平均の30.3%を上回っています。

ウォール街のトップ・ストラテジストであるゴールドマン・サックスのデビッ・コスティン氏は、投資家が“過度に楽観的”な状態にならないことが相場の持続的な上昇につながっていると指摘しています。

ただし、9月14日以降の5週間に限ると、投資家センチメントは強気が38.0%、弱気が27.5%と強気派が増え、弱気派が減っています。

S&P500株価指数は10月まで15カ月の間5%以上の下落がなく、10%以上は19カ月の間ありません。投資家心理が強気に傾かなかったことが、調整を遅らせてきたとの見方に立つならば、最近のセンチメントは潮目の変化を示唆していますので、今後の推移に注意したほうがよさそうです。

VIXの低下と株高は危険なランデブー

セイラー教授は、「世界的に非常に大きな不確実性が存在する局面で信じられないほどボラティリティーが低いというのは謎だ」とも発言しており、ボラティリティの低さにも危機感を持っているようです。

ボラティリティの低さには、2013年にノーベル経済学賞を受賞したイエール大学のロバート・シラー教授も懸念を示しています。シラー教授は、セイラー教授と同様に、投資家の不合理な行動を扱う行動経済学を主な研究領域としています。

シラー教授が独自に開発した景気循環調整後の株価収益率(CAPE)は現在、1929年の株価大暴落前に匹敵する水準にまで上昇しています。同教授は、株価が大幅に調整する兆しとして、高いCAPEと低ボラティリティの組み合わせ挙げており、現在がまさにその状態にあると警戒しています。

ところで、恐怖指数として知られるボラティリティ指数(VIX)が過去最低の水準となっています。VIXの過去平均は20前後となりますが、中央値は15程度でおおむね10から20の間で推移しています。これまで10以下になることはまれでしたが、今年の年央からは頻繁に10を下回っており、10月13日現在も9.61と歴史的な低水準にあります。

VIX低下には世界の中央銀行による緩和的な金融政策が一定の役割を果たしてきたと考えられています。FRBがバランスシートの縮小を開始したほか、欧州中央銀行(ECB)も近くテーパリング(量的緩和の縮小)を始める見通しです。また、日銀も昨年9月に目標を量から金利に切り替え、資産の購入量が減少傾向にあることから、事実上のテーパリングを既に開始しているとの見方もあります。

このように、主要国の中央銀行が金融政策の正常化へと動いているため、中銀の抱える資産の伸びが減速しており、近い将来に減少に転じる見通しとなっています。この影響によりVIXが歴史的な低水準から上昇を始めるのかどうかにも注目が集まるかもしれません。