9月の米雇用統計はハリケーンの影響で歪み生じており、結果の判断を難しくしています。雇用者数は伸びが鈍化し、賃金の伸びは加速しましたが、どちらも利上げ見通しへの影響は小さい見通しです。
雇用の減少は一時的、10月は大幅な増加へ
9月の米雇用者数は前月比3.3万人減少と2010年9月以来、7年ぶりの減少となりましたが、減少は一時的な給与の未払いであり、失業したわけではなさそうです。
雇用統計の調査期間は12日を含む週の1週間です。雇用者数を推計している事業所調査では給与の支払いがないと雇用者としてカウントされません。たとえば、ハリケーンの影響でレストランが休業となり、調査週に給与の支払いがなかった場合、たとえ雇用契約が継続していたとしても、従業員は雇用者とは認めらませんので、統計上は雇用者数が減少することになります。
米労働省はハリケーンの影響で150万人が自宅待機を余儀なくされたとしています。10月にはこれらの人々が復帰することで、雇用者数は大幅に増加する見通しです。
就業者が急増、失業率の低下も一時的
失業率は4.2%と8月の44%から0.2ポイント低下し、2001年2月以来、16年半ぶりの低水準となりました。雇用者数の減少と失業率の低下は相反する結果ですが、こうした現象が起こるのは、失業率の算定には事業所調査ではなく、家計調査が用いられているからです。
家計調査では実際に働いているかどうかは問題ではなく、本人が仕事に就いていると申告すれば就業者としてカウントされます。したがって、ハリケーンで自宅待機となっても、しばらくすれば職場に復帰することになりますので、就業者数が減ることはありません。
9月の就業者数は前月比90.6万人増と、政府機関閉鎖の影響があった2013年11月以来の増加幅となっています。8月までの1年間の月平均は14.9万人増でしたので、給与明細の発行を伴わない一時的な仕事の就いた人が激増したことを示唆しています。ただ、就業者の増加は過渡的な臨時の仕事が影響したと考えられますので、失業率の低下も一時的となりそうです。
レストランの閉鎖で平均賃金が上昇
9月雇用統計では時間当たり賃金が前年同月比2.9%上昇と8月の2.5%上昇から伸びが加速しています。
雇用が減っているのに賃金が上昇していることには違和感がありますが、これは雇用の減少が低賃金業種に集中したからです。
9月の時間当たり賃金の平均値は26.55ドルですが、業種によって大きな開きがあります。雇用統計の分類による主要13業種中、上位3業種は公益(39.38ドル)、情報(38.90ドル)、金融(33.44ドル)、下位3業種はレジャー・接客(15.55ドル)、小売(18.27ドル)、その他サービス(23.88ドル)となります。上位と下位では賃金に2倍かそれ以上の差があることがわかります。
ちなみに、管理職などを除くと平均賃金はより低くなり、たとえばレジャー・接客は13.47ドルとなっています。
9月の雇用者数の増減の内訳をみると、賃金が最も低いレジャー・接客が前月比11.1万人減と減少のほとんどを占めています。また、ワースト2位の小売りが0.3万人、ワースト3位のその他サービスが0.5万人、それぞれ減少しています。このように、雇用の減少が低賃金の業種に集中した影響で平均賃金が上昇したと考えられています。
雇用減少に心配は無用、賃金の行方のほうが心配
9月の雇用減少は、ハリケーンの影響で飲食店が休業となり、接客業の従業員が自宅待機となったことが影響しています。給与の振り込みが無かったということであり、10月の統計では無事に復帰することでしょう。
9月の雇用者数は8万人増加との予想に対して、3.3万人減少とちょっと予想外の結果となりましたが、就業者が急増していますので、雇用そのものを失ったとは考えづらいからです。
平均賃金の上昇は低賃金労働者の減少による一時的な現象ですので、持続性には疑問があります。トレンドとしての賃金の低い伸びが維持された場合には、個人消費の低迷が長期化する恐れがありますので用心したほうかよいかもしれません。
