仮想通貨はデジタル・ゴールドとも呼ばれており、金の代替品として紹介されることも少なくありません。ただ、WGCはこうした見方に異を唱え、仮想通貨はなぜデジタル・ゴールドではないのかを解説しています。
仮想通貨がデジタル・ゴールドにはなれない5つの理由
2017年のマーケットでは、ビットコイン価格の急騰にすべての話題を持っていかれた感がありますが、金価格も13%上昇と健闘しています。とはいえ、ビットコインの1300%には遠く及ばず、識者からは金はビットコインにとって代わられるとのコメントも少なくありません。
こうした状況を踏まえて、ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)が1月25日、仮想通貨がなぜ“デジタル・ゴールド”ではないのかについてまとめたリポートを公表しています。
同リポートでは、金は次の5つの点で仮想通貨とは異なると主張しています。
1.金市場はボラティリティが低い
2.金市場には流動性がある
3.金は規制の枠踏みの中で取引されている
4.金には投資ポートフォリオで効果的な役割を担っている
5.金と仮想通貨とは需給要因が重複しない
仮想通貨はそれ自体は新たな市場を開拓するかもしれませんが、これら5つの理由から金が資産運用で果たしている役割を仮想通貨が担うことは難しいと指摘しています。
金市場はボラティリティが低く、安定している
金投資には長い歴史があり、長期的に見ると値動きは非常に安定しています。金が通貨の裏付けとされていた時代には金価格の上昇はおおむねインフレ率と同じでした。ブレトン・ウッズ体制が崩壊した1970年代以降では年に約10%のペースで上昇しています。1970年代に急上昇していますが、過去40年のボラティリティ(価格の変化率)は他の金融資産と比べると安定しています。
仮想通貨の代表であるビットコインはここ数年で価格が急激に上昇し、2017年だけでも13倍に跳ね上がっています。ビットコインの値動きは1日平均で約5%と変動が激しく、昨年12月には短期間で約40%下落しています。価格の変動はドル建て金価格のおおよそ10倍です。激しい値動きは一部の投機家にとっては好ましい特性かもしれませんが、価値の保存には向いておらず、通貨としてビットコインで取引するには限界があるといわざるを得ません。
金には流動的な市場がある
仮想通貨市場には“売り買い”双方向の市場が未発達です。ほとんどの投資家はバイ・アンド・ホールドであることから、まとまった量の売りをこなせるマーケットの存在を欠いているようです。
仮想通貨の市場規模は8000億ドル、ビットコインの1日の取引量は平均で20億ドルと推計されています。この取引量は金の上場型投資信託(ETF)の取引量とほぼ同じです。ただし、金ETFの取引量は金市場全体の取引量の1%未満であり、金市場全体での取引量は1日平均2500億ドルとなっています。
金の需要先には多様性がある
金には7000年以上の資産や通貨としての歴史があり、歴史を通じで多様な需要先を形成しています。2007年から2016年までの平均で見ると、金の需要先は宝飾品が54%、投資需要が30%、工業用品としての需要が10%、中央銀行が6%となっています。宝飾品需要は宗教や文化にも根差しており、過去20年に渡って常に50%から60%と安定しています。
仮想通貨は電子決済のトークンとして利用され、潜在的には有望なマーケットではありますが、これまでのところ実際の決済での利用は限られており、利用の際には法定通貨と交換しているのが実情のようです。
金の供給には弾力性がある
仮想通貨と金はともに供給が限られていることが共通点となります。ビットコインは年約4%のペースで増加中で、2140年には供給がほぼゼロのなるように設計されています。金には毎約3200トンの供給があり、年約1.7%のペースで増加しています。
金の供給が過少であるように、ビットコインの供給に限度があることは魅力的です。ただし、金にはリサイクル市場があり、価格が上昇すると宝飾品を現金に換える動きが強まり、供給が増える傾向にあります。価格が上昇すると供給が増えることで、ボラティリティを抑える役割を果たしています。
また、ともに法定通貨ではないことも共通点です。ただし、金は唯一無二ですが、ビットコインはそうとは限りません。ビットコインに近い代替品を作ることは技術的に可能であり、類似のコインが出現しないとも限らないからです。
金は取引が認可されており、規制の枠組みも確立されている
ほとんどの国で金の取引は認可されており、規制もされています。一方、日本のような例外もありますが、中国では利用が制限されるなど、多くの国で仮想通貨は禁止こそされてはいませんが、認可されているわけではありません。
また、資金洗浄、資本流出、投資家保護、通貨発行益を失う恐れなどから突然取引が停止されるリスクもあります。
現時点では、米国では仮想通貨は取引ごとに利益または損失が発生するとみなされており、すべての取引の報告が義務付けらています。こうした煩雑さから、アマゾンやウォルマート、ターゲットといった米小売り大手はビットコインでの決済を認めていません。
金は戦略的に重要な資産
WGCは5つの理由から仮想通貨は“デジタル・ゴールド”にはなれないと指摘しています。金には流動的な市場があり、インフレ期には好調に推移し、景気後退期には株式市場と負の相関を示すという好ましい特性があります。金にはポートフォリオの中で効果的な投資ツールとしての役割が既に確立しているのです。
