8月の雇用統計では雇用者数が前月比31.5万人増と、30万人程度の増加を見込んでいた市場予想をやや上回った。失業は前月の3.5%から3.7%に上昇。市場予想では前月から横ばいの3.5%が見込まれていた。堅調な雇用拡大が確認されたことを受けて、株式市場は下落。市場では、8月の結果は米連邦準備制度理事会(FRB)の積極的な利上げを支持すると受け止められた。
雇用者数、8月は31.5万人増 市場予想をやや上回る
米労働省が発表した8月の雇用統計によると、非農業部門の雇用者数は前月比31.5万人増加した。30万人程度の増加を見込んでいた市場予想をやや上回った。過去12カ月間の累計では580万人増加し、足もとでは2020年2月の水準を24万人上回っている。
業種別では、専門・ビジネスサービス業、ヘルスケア、小売業で主に増加した。
専門・ビジネスサービス業は6.8万人増加した。コンピュータ関連サービス(1.4万人増)、技術コンサルティング(1.3万人増)、建築・エンジニアリングサービス(1.0万人増)、研究開発サービス(0.6万人増)などが好調だった。一方、法律サービス(0.9万人減)では減少した。専門・ビジネスサービス業は過去1年で110万人増加している。
ヘルスケアは4.8万人増。医院(1.5万人増)、病院(1.5万人増)、看護・介護施設(1.2万人増)などで大きく増えた。ヘルスケアは過去1年で41.2万人増加しているが、2020年2月の水準を3.7万人(0.2%)下回っている。
小売業は4.4万人増。過去1年では42.2万人増加した。総合スーパー(1.5万人増)、食料品店(1.5万人増)、健康・化粧品店(1.0万人増)、建材・園芸品店(0.7万人増)などが好調だった。一方、家具店(0.3万人減)は減少傾向が続いている。
平均時給は前月比0.15ドル(0.5%)増の32.27ドルだった。前年同月比では5.2%増加した。週平均労働時間は34.6時間で5カ月連続で横ばいとなった。
6月分が10.5万人下方修正されて29.3万人増に、7月分は0.2万人下方修正されて52.6万人増となり、2カ月合計では10.7万人の下方修正となった。
8月失業率は3.7%、前月から0.2ポイント上昇 予想外に悪化
8月の失業率は3.7%と前月から0.2ポイント上昇し、横ばい(3.5%)を見込んでいた市場予想に反して悪化した。失業者数は34.4万人増加して600万人となった。水準は7月にコロナ流行前の2020年2月に戻っていた。
失業率は、成人男子(3.5%)とヒスパニック系(4.5%)で上昇した。成人女子(3.3%)、ティーンエイジャー(10.4%)、白人(3.2%)黒人(6.4%)、アジア系(2.8%)ではいずれも前月から大きな変化はなかった。
失業者のうち、通常の失業者は18.8万人増加の140万人だった。一時解雇者は78.2万人で、前月からほぼ同じだった。
失業期間が27週以上の長期失業者は110万人で、前月からほぼ横ばいだった。長期失業者は全体の18.8%を占めている。
労働参加率は62.4%と前月から0.3ポイント上昇したが、2020年2月(63.4%)を依然として1.0ポイント下回っている。雇用率は60.1%で前月からほぼ変わらずとなった。雇用率は2020年2月(61.2%)を1.1ポイント下回っている。
フルタイムを希望しているが、見つからないなど経済的理由でのパートタイマーは410万人と前月からほぼ横ばいだった。
求職活動をしていないことから、労働人口にも失業者にもカウントされない非労働人口は前月から36.1万人減の550万人となった。2020年2月は500万人だった。このうち、過去12カ月以内に求職活動をしていたが、最近4週間では活動をしていない周縁労働者は140万人で、前月からほぼ変わらずとなった。
新型コロナの影響で在宅勤務をしている就業者は全体の6.5%で、前月の7.1%から低下した。新型コロナの影響で職場が閉鎖となり、まったく仕事をしていないかごく限られた勤務に従事している人は190万人で前月の220万人から減少した。このうち21.5%には少なくとも給与の一部が支払われ、この割合は前月とほぼ同じだった。
52.3万人が新型コロナの影響で職探しができない状態にあり、数字は7月からほぼ横ばいだった。こうした人たちは職探しをしていないことから失業者にはカウントされていない。
雇用堅調で9月FOMCは0.75ポイント利上げへ
7月の米消費者物価指数(CPI)の伸び率は前年同月比8.5%となり、前月の9.1%から伸びが鈍化した。同じく7月の米個人消費支出(PCE)価格指数は前年同月比6.3%上昇と6月の6.8%から伸び率を縮小した。また、8月の平均時給は前年同月比5.2%増と7月から横ばいとなった。賃金の伸びはインフレ率と正の相関があると考えられている。
一般にインフレ率と失業率はトレードオフの関係にあると考えられているが、特に1990代以降は低インフレと低失業率が並存し、この関係が崩れていた。ただし、コロナ禍からの景気回復過程では、インフレ率と失業率の間のトレードオフの関係が復活しており、最近までは失業率が低下する一方で、インフレ率が上昇していた。足もとでは失業率の上昇とインフレ率の低下が見られている。
ただし、インフレ率は米連邦準備制度理事会(FRB)が目標とする2%には程遠い状況で、次回9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では0.75ポイントの利上げが有力視されている。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループが発表しているフェデラル・ファンドレート(FFレート)先物市場が織り込む金利変更確度を示す「フェドウォッチ」によると、9月5日現在、9月会合での0.75ポイントの利上げ確率が60.0%となっている。
FRBは高インフレはしばらく続くとみており、早期利下げ観測には距離を置いている。年内の利上げ打ち止めの可能性は残されているものの、金利をしばらく高水準に維持して様子を見たい考えだ。堅調な雇用拡大と賃金の高い伸びはFRBが金利を高水準に維持する姿勢を正当化することから、株式市場にとってはむしろマイナス材料視される格好となっている。
