12月FOMCでは、政策金利が据え置かれた。据え置きは4会合ぶりのこと。声明文では景気見通しにやや楽観的な見方がうかがえたが、金利見通しは当面の据え置きを示しており、近い将来の利上げは見込まれていない。一方、年末商戦は低調なスタートとなり、景気見通しに暗い影を落としている。
景気楽観視も物価重視なら利下げ余地残す
12月10・11日に開かれた米連邦公開市場委員会(FOMC)では、短期金利の指標となるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は1.50~1.75%に据え置かれた。利下げは前回までの3会合連続で打ち止めとなり、新たな局面に入った。
声明文での景気判断に変更はなく、「緩やかな景気の拡大が続いている」ことを改めて確認した。堅調な労働市場に支えられた個人消費がけん引役となる一方、設備投資と輸出は「弱いまま」との見方を変えていない。物価も2%を下回り続けているとの認識を維持した。
一方、前回のFOMCで「適切に行動する」との文言が削除された政策見通しでは、今回も注目すべき変更があった。前回まで最大雇用と物価の安定の達成見通しには、「不確実性が残されている」としていたが、この文言が削除された。すなわち、前回まで「よくわからない」としていた見通しについて、霧が晴れたことを匂わせており、景気の先行きに対する自信を示した。
一方、今後の金融政策を決めるに当たっては、インフレ圧力やインフレ期待、国際情勢など考慮するとの文言が加えられた。
10月のコアPCE価格指数は前年同月比+1.6%と、9月の+1.7%から伸びが鈍化。市場予想の+1.7%にも届かなかった。景気の先行きに対する不透明感は払しょくされたようだが、
実際のインフレ指標を見る限りでは、インフレ率がインフレ目標に向かっているようすはうかがえない。
パウエル議長は、FOMC後の記者会見で「金融政策にあらかじめ決まった道筋はない」ことを再度強調しているが、今後の注目が物価になるのであれば、利上げよりも利下げの公算の方がより大きいと言えそうだ。
5会合ぶりに全会一致、来年は金利変更なし
金利据え置き決定は全会一致となった。全会一致となったのは5会合ぶりで、金利据え置き以外の選択肢は持ち合わせていなかったようだ。
ドットチャートの中央値を見ると、2020年末までの金利据え置きが予想されている。現時点では2021年に1回、2022年にもう1回の利上げが見込まれている。
一方、PCE価格指数の見通しを見ると、2019年の1.5%から2020年に1.9%まで上昇、2021年と2022年はともに2.0%と予想した。
2020年中に2.0%に到達するとは見ておらず、2.0%到達後の2021年と2022年に若干のブレーキを予定しているようだ。
来年はハト派傾向が強まる公算も、新理事承認の動きに注目
次回会合から地区連銀総裁4人の投票権が移る。2019年はジョージ総裁(カンザスシティ連銀)とローゼングレン総裁(ボストン連銀)がタカ派、ブラード総裁(セントルイス連銀)とエバンス総裁(シカゴ連銀)がハト派であった。
2020年はメスター総裁(クリーブランド連銀)とハーカー総裁(フィラデルフィア連銀)がタカ派、カシュカリ総裁(ミネアポリス連銀)とカプラン総裁(ダラス連銀)がハト派となる。メスター総裁とハーカー総裁はタカ派寄りではあるが、筋金入りのタカ派というわけではない。カプラン総裁もハト派寄りの中道派とされている。超タカ派のジョージ総裁が投票権を失う一方で、超ハト派のカプラン総裁が投票権を得ることから、全体としてはややハト派に傾くことになりそうだ。
現在空席となっている2人のFRB理事ポストに、トランプ米大統領はセントルイス地区連銀のクリストファー・ウォラー執行副総裁と欧州復興開発銀行(EBRD)米国理事のジュディ・シェルトン氏を指名する意向を示している。利下げの主張を続けるトランプ氏の意向を反映して、両名ともハト派である。現時点ではまだ流動的ではあるものの、両氏が実際に指名され、承認された場合には執行部そのもののハト派色が強まることになりそうだ。
年末商戦は予想より低調にスタート、景気先行きに暗雲
11月の米小売売上高は前月比0.2%増と、市場予想の0.5%増を大きく下回った。ただ、今年は感謝際が昨年より1週間遅く、その分12月の売上高が押し上げられる可能性がある。したがって、11月の失速は季節調整のいたずらの可能性も否めないが、年末商戦が予想されたほどには好調ではなかったことは気に留めておくべきだろう。
GDPの消費支出に最も大きく連動するとされる自動車とガソリン、建材、食品サービスを除いたコア指数は前月比0.1%増にとどまったことから、10-12月期の成長率は7-9月期の2.1%から大きく鈍化するリスクが高まっている。
FRBは2019年の成長率は2.2%、2020年を2.0%と予想しており、成長を牽引してきた個人消費が失速するようだと、GDPも予想外の減速となる可能性もある。
12月13日現在、アトランタ連銀のGDPナウは10-12月期成長率を2.0%、ニューヨーク連銀のナウキャストは0.7%と予想している。
GDPの伸びも気になるところだが、7-9月期は米企業の税引き後利益が前月比0.6%減と4-6月期の3.3%増からマイナスに転じたことも気になるところだ。前年同期比でも0.4%減少した。米中貿易合意で盛り上がる株式市場は、企業利益の低下をほとんど気にしていないようだが、企業業績の低迷は労働市場や所得の伸びに暗い影を落としている。
1月下旬に公表が予定されている10-12月期のGDPが個人消費の失速とともに低調となり、株価も調整となれば、FRBが一気に利下げモードに転じてもおかしくはないだろう。
