ドル円は110円台後半まで円安が進み、にわかに円安基調となっています。ただ、FRBが断続的に利上げを実施しているにもかかわらず、中長期的にみれは円高基調となっています。
米利上げでも進まない円安、インフレ格差を反映か
6月後半のドル円相場は110円後半まで円安が進み、約1カ月ぶりの円安水準となっています。3月に続き、6月のFOMCで今年2回目の利上げが実施しされ、年内にあと2回の利上げが示唆されたことを素直に反応しているといえるでしょう。
ただ、年初の113円台に比べるとまだ円高であり、日米金利差もしくは日米の金融政策の方向性の違いによって円安が進んでいるとは言い難い状況です。さらに時間軸を拡大すると、2016年12月からの今年6月までにFRBは6回の利上げを実施していますが、この間のドルは117円台から110円へと円高が進んでおり、中長期的にみても金利差が拡大しているにもかかわらず、まったく円安に振れていないことがわかります。
円安が進まない理由の一つとして米経済の先行きへの不安が挙げられます。6月29日現在のGDPナウが4-6月期の米GDP成長率を3.8%と予測していることからもうかがえるように、4-6月期の米経済は高成長が見込まれており、これは足ものでのドル高・円安の動きと整合的です。
ただし、5月の米実質個人消費が前月比変わらずとなるなど、先行きは不透明です。FRBの見通しでは2019年の成長率は2.4%と2018年の2.4%からの減速が予想されており、年後半から来年にかけては景気が加速するというよりも減速するイメージとなっています。このように、現在の成長ペースを維持できるとは見込みづらくなっていることから円安の進行を妨げているようです。
また、トランプ政権の保護貿易主義は当然ながら日本にも打撃となり、その影響は円高圧力となる公算大です。2017年の日本の対米貿易黒字額は中国、メキシコに次いで第3位ですので、日本の貿易黒字に対しても風当たりが強まることが予想されます。この場合、貿易黒字の削減とセットで円高が要求されることが見込まれます。
加えて、日米インフレ格差の拡大も円高要因となりそうです。米CPIは昨年6月の1.6%から今年5月には2.8%にまで上昇しており、右肩上がりの上昇が続いています。一方、日本のCPIは今年2月の1.5%から5月は0.7%と急速に弱含んでいます。その結果、日米のインフレ格差(米国マイナス日本)は2月の0.7%から5月は2.1%へと1.4%ポイントも拡大しています。FRBは3月と6月の合計で0.50%金利を引き上げてますが、インフレ格差拡大の半分以下です。理論的にはインフレ率の高い国の通貨は下落することになりますので、日米のインフレ動向からするとドル安が進んでおかしくないようです。
また、購買力平価の観点からも円安は進みづらいといえそうです。IMFの試算によると、ドル円の購買力平価は1ドル=98.87円となっています。為替レートは常に購買力平価付近にあるわけではなく、10%程度までのかい離は珍しくありませんが、20%を超えるとほとんどの場合で持続性がありません。既に10%を超える円安になっており、さらに円安へとかい離することは徐々に難しくなってくるようです。
