12月の米雇用統計では堅調な雇用情勢が維持される見通しです。ただし、労働市場を含めて米経済が全般的に好調な中、インフレや賃金の伸びが低調なまま置き去りとなっています。このちぐはぐ感が解消に向かうのかどうかが注目される中、解消されない場合にはイールドカーブがフラット化し、景気の先行きが怪しくなる恐れがありそうです。
雇用拡大も賃金の伸びの鈍さは変わらず
11月の雇用統計では雇用者数が+22.8万人と事前予想の+19.5万人を上回りました。12月の事前予想は+18.8万人と騰勢は鈍化する見通しですが、人口増加を吸収するのに必要な雇用増加は10万人弱とされていますので、予想通りであれば力強い数字といえるでしょう。
気になる賃金の伸びですが、11月は前月比+0.2%と事前予想の+0.3%を下回りました。10月が-0.1%と予想外のマイナスとなったこともあり、この2カ月間での伸びはほぼゼロとなっています。12月の事前予想は+0.3%が見込まれていますが、昨年12月も+0.3%だったので、予想通りの場合、前年同月比は+2.5%と前月から変わらずとなりそうです。賃金の伸びは昨年12月の+2.9%を直近のピークに伸び悩んでいます。
インフレを押し上げる賃金の伸びとして、前年同月比+3.5%が期待されていますが、実際のところ2009年4月を最後に+3.0%にすら達していません。まずは+3.0%を目指して賃金の伸びが加速するのかどうかが注目されます。
12月の失業率は4.1%と前月から横ばいが見込まれています。FRBは長期的な失業率の目安を4.6%としており、この水準を下回ると利上げを継続するインセンティブとなります。失業率は17年ぶりの低水準となっており、予想通りとなれば労働市場のタイト化を背景に景気過熱への警戒感が強まりそうです。また、賃金や物価の伸びに加速の兆しが見られた場合には、3月FOMCでの利上げ見通しが強まり、ドル円は円安に振れるリスクが高まるかもしれません。
利上げとインフレのスピード比べ?イールドカーブのフラット化を警戒
好景気が続く中、インフレが落ち着いていることへの違和感は少なくありません。この違和感はイールドカーブのフラット化に反映されており、米2年債と10年債の利回り格差は2日現在で54bpsと2007年10月以来、10年ぶりの低水準となっています。1年前の130bps前後と比べるとこの1年で80bpsほど縮小しています。
2017年にFRBは3回の利上げを実施しており、この影響で2年債利回りが上昇しています。12月29日現在の2年債利回りは1.89%と2016年末の1.20%から69bps上昇しており、これは3回の利上げの合計である75bpsとほぼパラレルな動きとなっています。
その一方で、10年債利回りは12月29日現在で2.40%と2016年末の2.45%から上昇しておらず、むしろやや低下しています。インフレ見通しの落ち着きが上昇を阻んでおり、たとえば5年先5年物期待インフレ率を見ると、1月2日現在で2.10%と2016年末の2.06%からほとんど変わっていません。
ただし、昨年6月の1.8%からはやや上向きとなっており、10年債利回りも6月の2.1%台から戻してます。したがって、インフレ見通しが上向けば10年債利回りも上昇することが期待できそうです。
イールドカーブのフラット化が警戒されるのは、逆ザヤになると景気後退が近づいたサインと考えられているからです。フラット化が継続するかどうかは、利上げスピードとインフレ見通しの上昇スピードとの競争になりそうです。
マーケットでは2018年は3月、6月、9月のFOMCでの利上げが織り込まれつつあり、4日現在の3月FOMCでの利上げ確率は73%と比較的高い確率での利上げが見込まれています。2018年に3回の利上げが実施された場合、もしインフレ見通しが現在と同じままだと、年後半にはイールドカーブが逆ザヤ化する恐れがあります。
12月の雇用統計の結果が、3月の利上げを肯定する内容となるのかどうか、またインフレ見通しが強まる内容となるのかどうかが注目されます。
