10月の党大会で政権の基盤を固めた習近平国家主席が3期目を目指して痛みを伴う改革に着手しようとしています。中国経済の減速が世界経済の失速を招く恐れがあり、2018年の波乱要因として警戒が必要となりそうです。
3期目を目指して痛みを伴う改革を着手へ
10月の党大会ではこれまでの慣例を破り、最高指導部に次世代のリーダーが選出さなかったことから、従来からうわさに上っていた習近平国家主席が3期を目指すとの観測が一段と強まっています。
ただし、68歳以上は引退するという慣例があることから、2022年に69歳となる習主席にとって3期目のハードルは決して低いとはいえません。また、2021年は中国共産党が100周年を迎える記念の年に当たることもあり、3期目を目指すためには2021年から2022年にかけて経済が安定し、景気が拡大していることが必須となりそうです。
とはいえ、2017年の中国経済は予想を上回る高成長を達成しており、このまま2022年まで全力疾走を続けるのは現実的ではありません。
IMFの2016年10月の見通しでは、2017年の中国の成長率は6.2%と予想されていましたが、今年10月の見通しでは6.8%に上方修正されています。ただし、IMFは高成長は過剰融資による持続不可能なものであり、「急激な」鈍化のリスクを高めているとクギを指しています。
中国側もこのことは承知しており、10月の党大会では習主席自らが「高い成長率」から「質の高い発展」への切り替えを宣言し、「量」から「質」へと重点を移す考えです。また、同主席は「重大なリスクの防止」にも触れており、中国企業の過剰債務を問題視していることを匂わせています。
同様に、中国人民銀行(PBOC)の周総裁は10月、信用膨張後に資産価格が突然崩壊する「ミンスキー・モーメント」が起きる可能性を警告しており、企業債務の圧縮を狙った政策を提言しています。
中国の非金融企業の債務残高の対GDP比率は165%まで上昇しており、IMFを始めとする国際機関から懸念の声が相次いでいます。
過剰債務の解消に向けて資金供給を厳格化
信用膨張に歯止めをかけるため、中国では企業への融資が急速に引き締まっています。たとえば、10月のマネーサプライ(M2)の伸び率は前年比8.8%と、予想の9.2%を下回り、1996年の統計開始以来の低い伸びとなっています。2016年のマネーサプライの伸びが13%、2017年の政府目標が11.5%だったことを踏まえると、中国政府は目標を大きく下回る伸びを黙認していることがわかります。
また、外貨準備の減少や人民元安を阻止する狙いから資本規制を実施しており、その影響で対外直接投資が大きく落ち込んでいます。2016年の中国企業の対外直接投資(金融を除く)は1701億ドルで過去最高を更新していましたが、2017年1-10月の対外直接投資は863億ドルと前年同期比40.9%減少しています。また、資本規制を嫌って対中投資も前年割れとなっています。
資本規制が功を奏して人民元が上昇した影響で輸入が増加し、輸出が減少したことから、10月までの貿易黒字は15カ月連続で減少しています。外貨準備の減少は止まりましたが、以前のように増えているわけではなく、外貨を稼ぐ力が後退している可能性もありそうです。
貿易黒字の縮小や対内直接投資の減少が続くと、対外直接投資を制限しても、資本が流出超となり、外貨準備が減少する恐れがあります。経常収支が赤字に転じるようだと、外貨準備の減少や人民元安を止めるために、中国政府は国内景気にブレーキをかけざるを得なくなり、緊縮的な政策が景気を不安定にさせることが懸念されます。
中国経済の減速で世界経済も失速する恐れ
2017年の中国経済は予想外の高成長となりましたが、予想外だったその分は2018年の下振れリスクといえるかもしれません。習主席の3選を見据え、2021年から2022年に安定した成長を目指すために、目先的には痛みを伴う改革を推進する可能性が高いからです。10月の党大会での発言や最近の軟調な経済指標はそのことを裏付けているとも受け取れるでしょう。
世界第2位の経済大国となった中国の成長が減速するようですと、世界経済の雲行きも怪しくなってきます。実際、2010年から2016年にかけて減速してきた中国経済と世界経済は、2017年にともに回復しており、中国は世界経済のバロメータとなっている観があるからです。
