7-9月期の金需要が8年ぶりの低水準へと沈みました。インドでの税制変更の影響もありましたが、ETFへの投資減少が響きました。金価格はおおむね堅調に推移していますが、世界的な株価の高騰が金への投資を鈍らせています。こうした中、金を裏づけとしたデジタル通貨、“デジタル・ゴールド”が登場しており、その行方が注目されています。
ETFへの投資が急減、税制変更でインドの宝飾品も落ち込む
ワールド・ゴールド・カウンシルが7日に発表したリポートによると、7-9月期の金需要は前年同期比9%減の915トンとなり、8年ぶりの低水準となりました。1-9月期では12%減少しています。
ETFへの投資が18.9トンと前年同期の114.3トンから大きく減少したことが響きました。宝飾品需要は3%減と微減にとどまり、公的機関の購入は25%増、バー・コインへの投資は17%増と好調でした。
インドでは7月から“物品サービス税(GST)”が導入されましたが、消費者は税制の変更による価格高騰を避けるために4-6月期に前倒しで購入していたため、7-9月期にはその反動が出ました。また、規模の小さな小売店では税制の変更にうまく対応できなかったことも影響したようです。加えて、資金洗浄対策で金取引の規制が強化されたことも需要を冷やした模様です。
その一方で、米国では好景気で消費者センチメントが改善したことから宝飾品需要が大幅に増加しています。10月の米消費者信頼感指数は13年ぶりの高水準となりましたが、1-9月の米宝飾品需要も歩調を合わせて増加し、7年ぶりの高水準となりました。
ETFへの投資は鈍化していますが、運用資産残高は昨年10月以来の高さとなっており、資金が流出しているわけではありません。金価格がおおむね1200ドル(1オンス当たり、以下同)から1300ドルのレンジ相場となったことで、積極的な買いが手控えられました。
米朝間の対立などから、リスクヘッジとしての金の人気は引き続き高かったものの、市場の関心がもっぱら株式市場に向かったことも影響したようです。
中国では不動産投資が規制されるなど、投資の選択肢が限られたことから、バー・コインへの投資需要が増加しています。その一方で、米国では株価の上昇によりバー・コイン需要は大きく落ち込みました。
このほか、工業品需要はスマートフォン用の電子回路や3Dセンサーへの需要が好調となり、4四半期連続で増加しています。
供給サイドをみると、鉱山生産が前年同期比1%減、リサイクルは6%減となり、総供給は2%の減少となりました。
金価格は北朝鮮リスクで一時高騰も株高で伸び悩み
世界の金需要は減少しましたが、金価格は比較的堅調でした。北朝鮮問題で地政学的リスクが高まったことから、9月には1300ドルの節目を大きく越えて一時1350ドル近辺まで上昇しています。11月10日現在のロンドン金現物価格は1280ドル台で推移しており、年初来の騰落率は+12.1%となっています。
ただ、世界同時株高となっていることから投資需要は伸びておらず、10月以降の金価格はやや伸び悩みとなっています。
ハウステンボス、世界初の金本位制に基づく「仮想通貨」?
ハウステンボスは6日、世界初の「金本位制に基づく仮想通貨」計画を発表しました。
従業員を対象に、独自のデジタル通貨「テンボスコイン」を使った決済システムを12月中旬より約3カ月間の予定で開始します。
ハウステンボスは、「テンボスコイン」の裏づけとして既に1トンの金(約50億円に相当)を購入しており、所有する金の一部を12月16日より「黄金の館」で公開する予定です。
「テンボスコイン」はスマートフォンの無料アプリを活用したデジタル通貨プラットフォームで運用されます。ハウステンボス内の指定の場所でチャージすることで、現金を使わずに場内で食事や買い物ができます。
将来的には、「テンボスコイン」を円やドル、ビットコイン等と両替可能な「仮想通貨」とし、世界初の「金本位制に基づく仮想通貨」として運用する予定です。
ハウステンボス以外にも、英国王立造幣局(ロイヤルミント)がブロックチェーンを利用した「ロイヤルミント・ゴールド(RMG)」の流通を年内にもスタートする予定です。RMGは平たくいえば、金の裏づけを持ったビットコインです。
また、英国のベンチャー企業「グリント」は既に金を利用したデビットカードビジネスを始めています。利用者は同社から金を購入し、食事や買い物などでカードを使用すると、利用額相当の金を「グリント」が売却してくれます。銀行に口座がなくても決済ができる点はデジタル通貨と同じです。
デジタル通貨に裏づけが必要かどうかは議論の分かれるところですが、無国籍通貨としての金の人気には根強いものがあります。
価格の高騰が続くビットコインが“デジタル・ゴールド”と呼ばれていることからも伺えるように、“ゴールド”が持つ信用は他に替えがたいものがあります。
1990年代後半には300ドル以下まで下落していた金価格ですが、ETFの普及で息を吹き返すと、10年余りで軽く5倍以上に跳ね上がりました。
デジタル通貨の普及の波に乗って、金が再び輝き出すかもしれません。
