テイラールールで知られるテイラー教授が自らのルール変更を示唆しています。変更した場合には、適正な金利水準は大幅に低下することになりそうです。
テイラー教授、テイラールールを変更へ?
スタンフォード大学のジョン・テイラー教授は10月13日、ボストン連銀主催のカンファレンスで、同教授が提唱するテイラールールはFRBの手足を縛るものではないとの持論を展開しました。
テイラールールとはテイラー氏が1990年代前半に考案した適正な政策金利の水準を求める関係式のことです。経済変数をインプットすることで簡単に求められますが、変数に何を採用するのか、またいくつの変数を利用するのか、などで幅広いバージョンがあり、精緻化によって複雑化する場合もあります。
オリジナルのルールでは、変数はインフレ率と国内総生産(GDP)の2つとなり、一般にはこのバージョンがよく知られています。その後の修正により、現在ではインフレ率と失業率を利用するのが定番となっていますが、いずれにしてもシンプルなモデルであることに変わりありません。
メディアではオリジナル版が取り上げられることが多く、10月中旬までに入手可能なデータをオリジナル版に当てはめると、適正な政策金利は3.75%程度と推計されています。一方、政策金利は現在1.00%から1.25%の間を推移していますので、推計値は実際の政策目標を大きく上回っています。
ルール変更なら適正金利は大きく低下も
テイラー教授はFRBの次期議長候補となっていますが、テイラールールでの推計値が高いことから、同教授が議長となった場合には利上げペースが速まるのではないかと警戒されています。
しかし、13日の講演でテイラー氏はこうした見方に異を唱えています。
テイラールールには定数として均衡金利が含まれています。均衡金利とは景気を刺激も抑制もしない中立的な金利水準のことで、実際には観察できないことから推計するしかありません。
テイラー氏は実質均衡金利を2%と推計しており、推計値が高いことがテイラールールでの適正金利水準を押し上げています。
ただ、テイラー氏の推計は1990年代初頭までのデータに基づいており、テイラー氏自身は現在は均衡金利が低下している可能性を認めています。FRBは実質均衡金利を0.75%と推計しており、テイラー氏はこうした推計値を容認する構えを見せています。
アトランタ連銀はテイラールールを独自に修正したモデルに基づく適正金利水準を公表しており、10月13日現在は2.94%と推計されています。このモデルでは、実質均衡金利は2.0%が適用されていますので、0.75%に置き換えると金利は1.69%にまで低下します。
また、イエレンFRB議長は1月の講演でテイラールールに触れ、独自のモデルを紹介しています。このイエレン・モデルによると10月現在の適正金利水準は1.33%と推計されますので、現在の政策金利とほぼ同じとなることがわかります。
テイラー氏が議長となっても利上げペースは変わらず?
テイラー氏はFRBにとって重要なのはモデルを決めることであって、どのようなモデルを採用するのかはFRBが自由に決められると述べています。
ルールを明示することで、政策の透明性が高まるほか、なぜ金利を上げるのか、または上げないのかといった説明も容易になるというのがテイラー氏の主張です。
テイラールールは機械的に金融政策を決めるツールとされていますが、ルールの変更が自由なことから、テイラー氏本人はこうした見方を否定しています。
具体的には、均衡金利の推計値や目標となるインフレ率、失業率などは適宜変更が可能だというスタンスですので、実際の運用に際しては実体経済の動きに対してある程度柔軟に対応することは可能なようです。
テイラー氏がFRB議長になった場合には、利上げペースが速まるというのがもっぱらの噂ではありますが、テイラー氏が考える適正な金利水準は現在の金利水準と大差がない可能性もありそうです。
