【IMF世界経済見通し】新興国がけん引も金融政策正常化がリスク

国際通貨基金(IMF)が最新の世界経済見通しを発表しました。世界経済のけん引役は先進国から新興国へとバトンタッチされる見通しですが、中央銀行による金融政策正常化の動きがリスクだと指摘されています。

成長エンジンは先進国から新興国へ

IMFが10月10日に公表した最新の「世界経済見通し(WEO)」によると、世界経済の成長率は2017年が3.6%、2018年が3.7%と前回7月の見通しからそれぞれ0.1ポイントずつ上方修正されました。

2016年の3.2%から成長を加速させ、その勢いは来年以降も維持される見通しとなっていますが、成長エンジンは先進国から新興国へのバトンタッチが見込まれています。

世界経済の成長率は2018年以降は3.7%で横ばいが予想されていますが、先進国の成長率は2017年の2.2%から2018年は2.0%、2019年は1.8%、2020年は1.7%と伸びが鈍化する見通しです。その一方で、新興国では2017年の4.6%から2018年は4.9%、2019年と2020年は5.0%へと成長を加速させ、世界経済のけん引役となる見通しです。

リスクは金融政策の正常化

IMFは見通しに対するリスクとして、主要先進国での金融政策正常化の動きを挙げています。米国ではバランスシート(資産残高)の縮小が開始され、欧州でもテーパリング(量的緩和の縮小)が始まろうとしています。また、日本でも目標を量から金利へと切り替えたことで、事実上のテーパリングは既に始まっているとの見方もあります。

こうした主要国での金融政策正常化の動きから、ドルなどの先進国通貨の金利が上昇することで、世界的な資金の流れが新興国から先進国へと向かい、新興国の金融市場が不安定になる恐れがあると分析しています。

インフレ見通しは低下、パート増加による賃金抑制も一因

先進国のインフレ率は2017年と2018年がともに1.7%と7月の見通しからそれぞれ0.2ポイント、0.1ポイントずつ引き下げられました。新興国も2017年が4.2%、2018年は4.4%と前回からそれぞれ0.3ポイント、0.2ポイントずつ下方修正されています。

IMFは、下方修正の主な理由としては原油価格の上昇が予想に届いていないことを挙げています。

また、成長が加速しているにもかかわず、インフレが加速しにくい背景として、失業率の低下などが示すように、表面的な労働需給は改善しているものの、パートタイム労働者の増大などが示すように、実質的には労働供給の余剰があるで賃金の伸びが抑制されていることを挙げています。

インフレ率が目標となる2.0%に届いていないことから、主要国中銀は金融政策正常化の動きを慎重に進めるようクギを刺しています。

トランポノミクスの実現は不透明、見通しには反映せず

米国の2017年の成長見通しは2.2%、2018年は2.3%とそれぞれ0.1ポイント、0.2ポイントずつ上方修正されています。

ただし、「米国は政策に先行き不透明感があるので、政策が変わらない前提で予測している」と述べており、米国の成長予測は財政面の刺激策による景気への追い風を想定していません。

IMFは、今年1月のトランプ氏の大統領就任の直前に、同氏が公約した財政面の押し上げ効果を米経済見通しに算入しました。しかし、6月にはトランプ政権が減税とインフラ支出拡大の実現に向かうとの想定を取り除き、米成長見通しを下方修正しています。

また、生産性の伸びが低いことから、米成長率は長期的に緩やかになるとみており、米国の潜在成長率を1.8%と推計しています。これはトランプ政権が目指す3.0%を大きく下回ります。

中国の過剰債務問題を改めての警告

IMFは今年の中国の成長率を6.8%、来年を6.5%とし、それぞれ0.1ポイントずつ上方修正しました。

ただし、政府主導によるインフラ投資が成長を押し上げており、その結果、国有企業を中心に債務が膨張していると指摘。また、経済のサービス・消費への移行が遅れていることにも懸念を表明しています。

これらはいずれも中国の成長の「急激な」鈍化のリスクを高めることになると警告しています。

日本、中長期では厳しいと予想

2017年の日本の成長率は1.5%と7月の1.3%から0.2ポイント上方修正されましたが、来年以降は1.0%未満の成長が見込まれており、中長期的には厳しい現実が予想されています。

2019年10月の消費税増税を前提に、2020年の成長率は0.2%とほぼゼロ成長が見込まれています。また、2022年でのインフレ率は1.6%と5年後においても2.0%の目標達成は難しい見通しです。

低成長、低インフレ、巨額の政府債務という構図に大きな変化は期待しづらいようです。