来年2月のFRB議長交代を機に金融政策の戦略見直しを求める声が高まっています。中でも、サンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁が提案している物価水準目標の導入についての議論が活発化しており、今後の行方が注目されそうです。
来年2月にパウエル新体制が発足、金融政策の戦略見直しへ
11月20日、イエレンFRB議長は来年2月の議長交代と同時に退任することが正式に発表されました。12月中にはFRB副議長の指名が見込まれており、10月に就任したクオールズ理事(銀行監督担当副議長)を含めてパウエル新体制はかなりフレッシュな顔ぶれとなります。
執行部の交代を機に、これまでの金融政策の戦略を見直す動きが活発化しそうです。
先週の14日には、アトランタ連銀のボスティック総裁が「執行部の交代は金融政策の見直しを議論する好機」との見方を示しており、来年2月のパウエル新体制の発足を機に新たな枠組みについての議論が進む見通しです。
ウィリムズ総裁が物価水準目標の有用性を主張
注目はサンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁が提唱している物価水準目標です。
同総裁は6日、2%という具体的なインフレ率よりも物価水準を目標にするほうが高い効果を導き出せるとする論文を発表し、現在採用されている2%のインフレ目標に代わる新たな枠踏みとして物価水準目標を提示しています。
同論文では、潜在成長率の推計には誤りが多いと指摘。現在の金融政策ルールはこの誤りの多い推計に依存しているとして上で、物価水準目標はこの推計に依存しないことを利点として挙げています。
また、自然利子率がゼロ%近辺まで低下していることから、インフレ目標が2%のままでは適正な金利水準も2%台にとどまる可能性にもふれ、景気後退で利下げを実施した場合、すぐにゼロ%の下限に到達してしまうことを危惧しています。
同様の危機感をシカゴ連銀のエバンス総裁も抱いており、インフレ目標を引き上げるために物価水準目標の導入を積極的に支持しています。
物価水準目標では、インフレ率が目標を下回った期間も含めた“平均値”が目標となるため、現在のように2%を下回る期間が続くと、当面は2%を上回るインフレ率を許容することになり、それに伴って適正な金利水準も上昇することになります。
実際にインフレ率が上昇するのかは疑問、議論の行方に注目
ウイリアムズ総裁は16日、新たな政策の枠組みを検討する際にインフレ目標の引き上げを排除すべきではないと述べ、物価水準目標について現在の枠組みに「比較的容易に」適合することから利点があるとの見解を示しました。
新たな枠組みの採用にはハードルも少なくないと考えられますが、同総裁は今後2年から3年は景気後退の訪れを予想しておらず、この間に議論を深めればよいとのスタンスです。
過去を振り返ると、2006年に就任したバーナンキ前議長が、それまでの慣行を覆して2012年に持論であったインフレ目標を導入しています。イエレン副議長(当時)もインフレ目標には積極的であったことを踏まえると、執行部内のでコンセンサスが形成できるのかどうかがカギとなりそうです。
とはいえ、2%のインフレ目標が導入された2012年以降、年ベースでインフレ率が2%を超えたことはありません。失業率は17年ぶりの低水準であるにもかかわらず、インフレ率が一向に上向かない現状を踏まえると、物価水準目標を導入したところで思惑通りにインフレ率が上昇するのかどうかは疑問の余地がありそうです。
いずれにしても、執行部の交代は大胆な戦略転換の契機となりますので、パウエル新体制の今後の動きに注目です。
