10月の米雇用統計では雇用者数が大幅に増加し、失業率が低下するなど雇用情勢の改善を示唆する結果となりました。ただし、内容を詳しく見ると磐石とも言いがたく、不安材料も散見されます。
雇用者は26.1万人増、失業率は4.1%
10月の非農業部門の雇用者数は前月比26.1万人増となりました。事前予想の31万人増には届きませんでしたが、ハリケーンの影響があった9月の1.8万人増からは急回復しています。
10月までの3カ月平均は16.2万人増と8月までの1年間の月平均値である17.5万人増と遜色のない数字となり、ハリケーン前のトレンドへの回帰がうかがえます。
9月はハリケーンの影響で休業となったレストランが10月に再開されたことが雇用者数の増減を大きくしています。飲食店での雇用者数は9月が9.8万人減、10月は8.9万人増でした。単純にこの数字を差し引くと9月は11.6万人増、10月は17.2万人増となり、トレンドを見極めるにはこちらの数字も参考となりそうです。
10月の失業率は4.1%と前月から0.1ポイント低下し、2000年12月以来、16年10カ月ぶりの低水準となりました。今年1月に4.8%だった失業率は10月までに0.7ポイントも低下しており、失業者数は年初と比べ110万人減少して650万人となっています。また、失業者は10月だけで28.1万人も減少しています。
賃金の伸び鈍化は引き続き“謎”のまま、消費の減速を警戒へ
雇用が拡大し、失業率が低下する中で賃金が伸び悩んでいます。10月の時間当たり平均賃金は前年同月比2.4%上昇と前月の2.8%上昇から伸び率が低下しました。10月の伸びは昨年2月以来、1年8カ月ぶりの低水準です。
賃金の低い飲食店の従業員が9月に減少した一方で10月は増加したことが影響していますが、一時的な休職者が復帰していますので、10月の平均賃金は正常化した姿と考えられます。ハリケーンの影響を除くと2月の2.8%から10月の2.4%へ、伸び率は基調的に低下しているようです。
米連邦準備理事会(FRB)が重視している9月の個人消費支出(PCE)物価指数は、ハリケーンの影響でガソリン価格が上昇したことから、前年同月比1.6%上昇と前月の1.4%上昇から伸びを加速しましたが、変動の激しいエネルギーと食品を除くコアPCE物価指数の伸びは1.3%と前月から横ばいにとどまっています。コア指数の伸びは年初の1.9%から緩やかな低下傾向にあり、おおむね賃金の伸びの鈍化と歩調を合わせています。
また、週当たり賃金が小幅ながらも前月比で減少している点もきがかりです。米国では所得の伸びを上回る消費の拡大が続いており、9月の貯蓄率は3.1%と2007年12月以来の低水準となっています。
貯蓄の取り崩しによる消費の拡大が長続きするとは考えづらいことから、賃金や所得の低い伸びが継続した場合、個人消費の減速を招く恐れがあります。
雇用の増加と失業率の低下は明るい材料ですが、低い賃金の伸びは景気の先行きに暗い影を落としています。
