8月の雇用統計では雇用者数が前月比23.5人増と8カ月連続で増加し、失業率は0.2ポイント低下して5.2%に改善した。雇用者数の伸びは市場予想を大幅に下回り、新型コロナウイルスの変異株「デルタ型」の流行が雇用市場に悪影響を及ぼしていることが浮き彫りとなった。ただし、雇用者数の伸び鈍化は米連邦準備制度理事会(FRB)のテーパリング(資産買い入れ規模の縮小)開始を遅らせるとの見方から、株式市場は深刻打撃を受けなかった。
雇用者数、8月は23.5万人増 予想大きく下回る
8月の雇用統計では、非農業部門の雇用者数は前月比23.5万人増となり、市場予想の72万人増を大きく下回った。7月の110万人増、6月の96.2万増から大幅に伸びが鈍化した。2020年4月以降、雇用者数は累計で1700万人増加したが、20年2月の水準を530万人下回っている。
業種別では、専門・ビジネスサービス業が7.4万人増と大きく伸びた。ただし、昨年2月と比べると56.8万人減となり、このうち派遣サービスが26.2万人と半分以上を占めている。
輸送・倉庫業が5.3万増加し、昨年2月の水準を2.2万人上回った。
教育関連では、私立教育で4万人増加した一方で、州政府で2.1万人、地方自治体で0.6万人それぞれ減少した。コロナ流行の影響で、例年の季節的な増減員が見送られていることから、実勢の把握が困難になっている。教育関連での雇用者数は、昨年2月の水準に比べると私立で15.9万人、州政府で18.6万人、地方自治体で22万人それぞれ減少している。
レジャー・ホスピタリティはほぼ変わらず。過去6カ月間では平均で35万人増加していた。引き続き、昨年2月を10.0%、170万人下回っている。
一方、小売業では2.9万人減少した。小売業での雇用者数は昨年2月の水準を28.5万人下回っている。
平均時給は0.17ドル増の30.73ドルと、5カ月連続で増加した。ここ数カ月のデータは、経済活動の再開にともなう労働需要の高まりを受けて、賃金の上昇圧力が高まっていることを示唆している。
週平均労働時間は34.7時間で、3カ月連続で同じとなった。
6月分が2.4万人分上方修正され93.8万人増、7月分は11万人分上方修正されて105.3万人増となり、2カ月合計では13.4万人の上方修正となった。
8月失業率は5.2%、前月から0.2ポイント低下 予想と一致
8月の失業率は5.2%と前月から0.2ポイント低下し、市場予想と一致した。失業者数は840万人に減少した。コロナ流行前の昨年2月は失業率が3.5%、失業者数は570万人だった。
失業率は、成人男子が5.1%、白人が4.5%に低下した。一方、ティーンエイジャーは11.2%に上昇した。成人女子が4.8%、黒人が8.8%、 ヒスパニック系が6.4%、アジア系は4.6%となり、それぞれ前月から大きな変化はなかった。
失業者のうち、一時解雇者は130万人で前月からおおむね横ばいとなった。昨年4月のピーク1800万人から大きく減少しているものの、昨年2月を依然として50.2万人上回っている。通常の失業者は前月比44.3万人減の250万人で、昨年2月を120万人上回った。
失業期間が27週以上の長期失業者は24.6万減の320万人。長期失業者は昨年2月の水準を210万人上回り、全体の37.4%を占めた。5週未満の失業者数は210万人でほぼ変わらずだった。
労働参加率はほぼ横ばいの61.7%で、昨年6月以降のレンジ61.4~61.7%に収まった。8月は昨年2月を1.6ポイント下回った。雇用率は58.5%でほぼ横ばいとなった。昨年4月のボトム51.3%から持ち直しているものの、昨年2月の61.1%を依然として下回っている。
フルタイムを希望しているが、見つからないなどの理由でパートタイムで働く経済的理由でのパートタイマーは前月からほぼ横ばいの450万人となった。昨年2月に経済的理由で働いていたパートタイマーは440万人だった。
求職活動をしていないことから、労働人口にも失業者にもカウントされない非労働人口は83.5万人減の570万人となった。昨年2月の500万人を引き続き上回っている。このうち、過去12カ月以内に求職活動をしていたが、最近4週間では活動をしていない周縁労働者は29.5万人減の160万人となった。
新型コロナの影響で在宅勤務をしている就業者は全体の13.4%となり、前月からおおむね横ばいとなった。新型コロナの影響で職場が閉鎖となり、まったく仕事をしていないかごく限られた勤務に従事している人は560万人で7月の520万人から減少した。このうち13.9%には少なくとも給与の一部が支払われ、割合は7月の9.1%から増加した。
150万人が新型コロナの影響で職探しができない状態にあり、数字は7月からほぼ横ばいとなった。こうした人たちは職探しをしていないことから失業者にはカウントされていない。
失業保険申請件数は減少、7-9月期成長率見通しは3%台後半
8月28日までの1週間の新規失業保険申請件数は34万件と、前週から1.4件減少した。市場予想(34.5万件に減少)を下回り、コロナ流行以降で最も低い水準に低下した。
州別では、カリフォルニア、イリノイ、バージニアなどで減少した一方で、ミズーリ、オハイオなどで増加した。
失業保険の継続受給者は8月21日までの1週間で274.8万件と、前週の290.8万件から減少した。
米疾病対策センター(CDC)によると、9月4日時点で米国内に配布された新型コロナワクチンは4億5000万本余りで、約3億7400本が投与された。人口の53%が接種を完了し、62.3%が少なくとも1回の投与を受けた。65歳以上では82.1%が接種を完了し、92.4%が少なくとも1回の投与を受けている。18歳以上では64%が接種を完了し、74.8%が少なくとも1回の投与を受けた。
9月2日時点でのGDPナウは7-9月期のGDPを前期比年率3.7%増と予想。同じく8月27日時点のナウキャストは3.79%増と予想しており、堅調な拡大が続く見通しだ。
低調な雇用統計を受けて、市場では米連邦準備制度理事会(FRB)の早期量的緩和縮見通しが後退し、大手ハイテク株が上昇。主要株価指数はおおむね過去最高値近辺を維持した。
