昨年の米大統領選挙後から続くトランプラリーを背景に、米国ではアクティブ運用へと資金が回帰しています。好調な運用益に後押しされていますが、債券ファンドには構造的なメリットもあると指摘されています。
約10年ぶりの好成績でアクティブ運用へ資金が回帰
ETFを中心としたパッシブ型の資産運用がマーケットを席巻する中、米国ではアクティブ運用へと資金が回帰しています。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ(BAML)が7月21日に公表した週間調査によると、7月19日までの週にアクティブ型ファンドへの資金流入が2年半ぶりの高水準となりました。
アクティブ運用が見直されている背景には良好なパフォーマンスがあります。BAMLによると、7月まで5カ月連続で大型株ファンドの半分余りがベンチマークを上回るパフォーマンスを挙げており、2009年以来、約10年ぶりの長期好成績となっています。テクノロジー株をオーバーウェイトにしたことなどが功を奏した模様です。
債券ならアクティブでも長期的にパッシブを上回る?
一般に、アクティブ運用は手数料が高いことから、長期的にパッシブ運用のパフォーマンスを上回ることは難しいと考えられています。
こうした考え方に対し、ピムコは今年4月に“債券は違う”というリポートを公表して異を唱えています。同リポートによると、債券市場では、大半のアクティブ型ファンドの手数料控除後リターンは、過去1年、3年、5年、10年のすべての期間でパッシブ型を上回っているからです。
ピムコは、債券市場でアクティブ運用がパッシブ運用をアウトパフォームできる理由として次の4つの利点を挙げています。
1.債券市場では中央銀行をはじめとして、参加者の47%が経済合理性を追求していません。中央銀行は自国通貨を安くしてインフレを促したり、資産価格を上昇させるために債券を購入しているので、こうした投資行動を利用して利益を得ることができます。
2.債券のインデックスに銘柄の入れ替えがあると、パッシブ運用者が事後的に売り買いすることでこれらの銘柄の価格が変動します。アクティブ運用者には銘柄の入れ替えを事前に予想することで利益を得る機会があります。
3.株式市場での毎年の新規発行額は時価総額の1%程度に過ぎませんが、債券には満期があることから債券市場ではその額が20%程度に膨らみます。新規発行を消化するために、通常はやや割安な価格で売り出されますが、パッシブ運用者はインデックスに組み入れられた後、すなわち起債から数週間後に債券を購入するため、このようなディスカウントで購入することはできません。
4.アクティブ運用では、ハイイールド債やモーゲージ債などの高利回り債への投資比率を高めることができます。
このように、債券市場には非合理的な投資家が存在することなどから、アクティブ運用がパッシブ運用を長期的にアウトパフォームできる理由があり、債券市場は株式市場とは“違う”可能性があるわけです。
債券ETFはアクティブがパッシブを上回る
アクティブ運用を取り入れている債券ETFのパフォーマンスを調べてみると、実際にパッシブ型をアウトパフォームしていることが分かります。
パッシブ型の代表格であるiShares Core U.S. Aggregate Bond ETF(ティッカー:AGG)を見ると、年初来のトータルリターンが3.21%、過去1年だと0.34%、3年で8.46%、5年で10.83%となっています(9月21日現在)。
AGGはバークレイズ米国総合インデックスに連動していますので、このインデックスをベンチマークとしてアクティブ運用しているピムコのPIMCO Total Return ETF(BOND)のリターンと比べてみると、BONDは年初来で4.32%、1年で2.82%、3年で10.44%、5年で16.42%とすべての期間でAGGをアウトパフォームしています。経費率はAGGの0.05%に対しBONDは0.55%と割高ですが、経費率を差し引いてもBONDの優位は動きません。
また、類似の SPDR DoubleLine Total Return Tactical ETF(TOTL)を見ると、2015年2月に上場したTOTLは年初来で3.88%、1年で1.58%とこれまでのとこは順調にAGGをアウトパフォームしています。TOTLも経費率は0.55%です。
トランポノミクス関連のテーマ投資も人気に
アクティブな投資戦略としてトランポノミクスに関連したテーマ投資も人気を集めています。たとえば、メキシコとの緊張が高まることを予想してメキシコ株をショート(売り持ち)し、金融の規制緩和を期待してファイナンシャル・セクターの比重を高めるといった戦略が成功しています。
具体的な数字を見ると、メキシコ株であればiShares MSCI Mexico Capped ETF(EWW)の昨年11月の大統領選挙後のトータルリターンは6.5%上昇とSPDR S&P500 ETF(SPY)の18.8%上昇を大きく下回っています。その一方で、金融セクターで構成されているFinancial Select Sector SPDR Fund(XLF)は29.2%とSPYを大幅にアウトパフォームしています。
これらの数字は、S&P500を単独でロング(買い持ち)した場合よりも、XLFやEWWをロング・ショート戦略などで取り入れることで、より高いリターンが得られたことを示しています。
株式のアクティブETF、話題のCWSは残念な結果に
特定のセクターに対するオーバーウェイトやテーマ投資はETFを使ってアクティブに運用することではありますが、アクティブに運用されたETFとは違います。その意味では、昨年9月に上場されたAdvisorShares Focused Equity ETF(CWS)はパフォーマンスに応じて手数料が決まる初めてのETFとして話題となりました。
CWSはファンドマネージャーが選んだ25銘柄に均等に投資し、毎年末に5銘柄を入れ替えます。パフォーマンスがS&P500を2%以上、上回るか下回るかで手数料が変動する仕組みとなっており、投資家とファンドマネージャーの利害が一致するところに特徴があります。
ただし、CWSの年初来での騰落率は9月25日現在で8.1%上昇とベンチマークとなるSPYの11.7%上昇を下回っています。また、運用残高も1200万ドルとやや寂しい数字となっています。
CWSでは、投資判断はすべてファンドマネージャーに任されており、文字通りのアクティブETFではありますが、これまでのところパッシブ運用をアウトパフォームするには至らず、残念な結果となっています。
